3次元の音響「ドルビーアトモス」体験 天井スピーカー「有」「なし」の両方を支えるソリューション

公開 : 2023.06.15 22:35  更新 : 2023.06.15 22:37

「ドルビーアトモス for カーズ」のデモカーを取材。21個のスピーカーで立体音響を楽しめます。天井スピーカーがないクルマでも、3次元の音響を実現できるそうです。

立体音響のいま Dolby Atmos for Carsとは

執筆:Hajime Aida(会田肇)

“車での移動空間がエンターテイメント空間になる”

このテーマをキーワードに、ドルビージャパンが年初の国内イベントに出展したのが、車載用として開発された「Dolby Atmos(以下:ドルビーアトモス)for Cars」である。その体験会がドルビージャパンのデモルームで行われた。

ドルビー日本法人のデモカー。21個のスピーカーを搭載し、7.1.6chの音響を体験できる。
ドルビー日本法人のデモカー。21個のスピーカーを搭載し、7.1.6chの音響を体験できる。    AUTOCAR JAPAN

体験したのは「ドルビーアトモス for Cars」をインストールしたアルファードだ。

車内には合計21個のスピーカーを搭載してドルビーアトモスをフルスペックで再現できる7.1.6ch環境が構築されていた。システムとしては、平面スピーカー(7ch)、サブウーファー(1ch)、天井スピーカー(6ch)を搭載する。

ユニットは、平面スピーカーが30mmツイーターと170mmウーファーの2ウェイ仕様をセンターとフロントドア、スライドドア、3rdシートに。

サブウーファーはカーゴルームに250mmユニットを、そして天井スピーカーとしてフロント、ミドル、リアの3か所に左右2個ずつ50mmユニットを組み合わせたものだ。

一般的にドルビーアトモスといえば、サウンドに立体感を生み出すために平面だけでなく天井にもスピーカーを配置することで知られる。これによって、3次元での音の移動が再現可能となるのだ。

特に、映像制作者の意図を反映させるためにもこのシステムは重要なものとされており、このアルファードはその再現をフルに発揮するために準備されたものと言えるだろう。

「チャンネルベース」「オブジェクトベース」?

ただ、今回の試聴会はそのシステムをフルで体験するために設定されたのではない。

ドルビーアトモスでは、そうした“天井のスピーカー”まで用意したフルシステムでなくても、立体的なサウンドが楽しめることを実体感として知ることが目的だ。

インパネには30mmのツイーターが3つ。そのうちセンタースピーカーの手前には170mmのウーファーが配置されている。6つの天井スピーカーのうち2つは、フロントハイト(50mm)をAピラーに設置している。
インパネには30mmのツイーターが3つ。そのうちセンタースピーカーの手前には170mmのウーファーが配置されている。6つの天井スピーカーのうち2つは、フロントハイト(50mm)をAピラーに設置している。    AUTOCAR JAPAN

実はドルビーアトモスを知る上で理解しておくべきことがある。それは、サラウンド効果を再現する手法として、「チャンネルベース」と「オブジェクトベース」という手法があることだ。

「チャンネルベース」とは事前に想定される出力チャンネル数に合わせた形で音声をあらかじめ制作するもので、各スピーカーからはそれぞれのチャンネルが対応して再生する。

収録場所の音場をそのまま再現するのに向いており、コンサートホールやライブ会場の再現に向いている手法と言える。これまでのサラウンド再生はこの手法がほとんどだ。

一方、「オブジェクトベース」では、音源に“位置情報”を持たせ、各スピーカーからどのような音を出すのか、その情報をリアルタイムにレンダリングして再生する。

それぞれの音を“オブジェクト”として捉えているため、システムに応じて動き・音量などの変化に追従できるのがポイントとなる。

つまり、チャンネルベースで制作された従来のサラウンドでは、立体的なサウンドを再現するにはどうしても天井にもスピーカーを用意する必要がある。

それに対してオブジェクトベースでは、動きを再現すべきオブジェクトに音声+3次元の位置情報を持たせ、それを再生時のシステムに合わせて演算してオブジェクトの動きを追従させる。

これによって、実際にはスピーカーがない場所から、あたかも音が出ているように錯覚させられ、数少ないスピーカーでも立体的なサウンドが楽しめるようになるというわけだ。

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    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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