老朽化で修理代増加、クルマ買い替える余裕もない 点検控える人も 英国

公開 : 2023.06.16 18:25

英国では「生活費危機」の中、節約のためにクルマの整備を控えるオーナーが約3分の1に上るという報告が。クルマを買い替えることができず、高い修理代を払い続ける人も。

節約で点検サボった人が約3分の1

生活費と中古車価格が上昇し続ける中、英国の自動車ユーザーは、節約のためにクルマのメンテナンスを控える人と、クルマを買い替えることができず、将来の高額な修理代を恐れて、問答無用でメンテナンスを行っている人の2つのタイプに分かれている。

フォルクスワーゲン・ファイナンシャル・サービス(VWFS)が英国で2000人のドライバーを対象に行った調査によると、3分の1のオーナーが生活費の高騰によりクルマの必須点検を怠ったことがあり、35歳以下のほぼ半数が、点検が必要だと知りながら運転したことがあるという。

故障時の修理代をおそれて点検するか、節約のために点検を控えるか、2つのタイプのオーナーがいるようだ。
故障時の修理代をおそれて点検するか、節約のために点検を控えるか、2つのタイプのオーナーがいるようだ。

VWFSのマイク・トッドCEOは、「生活費の高騰により、多くのドライバー、特に若いドライバーは必要不可欠なメンテナンスを怠り、安全性を損なうという難しい決断を迫られています」と述べている。

同社の調査結果は、HalfordsやBook My Garageといった他社の調査結果と同じで、それぞれ予算不足の自動車ユーザーがクルマの整備を控えているという報告を上げている。

こうした主張は、自動車ディーラーによっても裏付けられているようだ。最近の報告書によると、ディーラーの41%が、販売する車両年式が古くなってきていると回答し、54%が車両の状態が悪化していると回答している。

金融会社Startline Motor FinanceのCEOであるポール・バージェス氏は、「ディーラーにとって、在庫供給状況は一向に改善されず、いくつかの重要な点では悪化しています。老朽化し、状態が悪化した車両を売らなければならないのです」と話す。

中古車ディーラーCar Shopのナイジェル・ハーリーCEOは、1万ポンド(約175万円)前後で販売されている古い中古車は、故障などの観点からアフターセールスのリスクとなると述べた。

英国のクルマの平均車齢は現在8.4年で、記録上最も高い。約530万台が製造から15年以上経過しており、2001年の170万台から増加している。

新車の生産制限が緩和されたため、ここ数か月で中古車在庫は増加しているが、中古車販売台数はパンデミック前に比べて9%近く減少している。

このため、中古車価格の下落が期待されたが、4月には前年同月を上回る価格を見せ、多くの人が老朽化したクルマを維持せざるを得なくなった。しかし、こうしたクルマのすべてが、点検する余裕のない所有者によって放置されているわけではない。

自動車整備工場の生産性向上についてアドバイスするコンサルタント、アンディ・サヴァ氏によると、特に独立系の工場は非常に忙しいという。

「以前は3~5日かかっていた対応も、今では10~14日かかるようになっています。パンデミック後の供給不足と中古車価格の高騰により、人々はクルマをより長く維持することを余儀なくされ、そのために手入れをするようになったからです」

ギルフォード近郊にある独立系整備工場Peter Silvester & Sonsの広報担当者も同じように語っている。「1年前なら2、3日で修理できたのに、今は10日前から予約で一杯です。わたし達の経験では、顧客はクルマのメンテナンスを減らしてはいません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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