格安フェラーリやポルシェを選ぶ モンディアル or ボクスター 新車のSUVより魅力的? 後編

公開 : 2023.06.27 08:26

必要な整備でボクスターを普段の足にする

販売しているのは、ロンドンの東に拠点を置くUKカーズ・クラブ社。経営者のアッシュ・レーマン氏によれば、新しいポルシェを購入した顧客からの、下取り車だという。通常は、自動車オークションから仕入れることが多いそうだ。

このボクスターで留意したいのが、前述の傷や汚れのほかに、ステアリングホイールとシフトレバーの摩耗。ブレーキパイプの一部も錆びており、ブレーキパッドとディスクは交換した方が良いだろう。

ポルシェ・ボクスター(986型/1996〜2004年/英国仕様)
ポルシェ・ボクスター(986型/1996〜2004年/英国仕様)

サスペンションのマクファーソンストラット部分にも、腐食が見られる。エンジンからは、オイルが滲んでいる。運転席側のパワーウインドウは動かない。少なくとも車検の記録から、走行距離は改ざんされていないようだ。

問題は少なくないが、ブレーキを交換し、パワーウインドウを修理すれば、ボクスターを普段の足にできる。オイル漏れの進行具合次第ではあるが。

周辺の道を試乗させてもらったが、サスペンションのダンパーとブッシュもヘタっている様子。称賛を集めた本来のシャシーを堪能するなら、交換した方が妥当だろう。しかし、それ以外は快調に感じられた。

全般的な点検も含め、修理を整備工場に依頼したとして、英国では3000ポンド(約53万円)から5000ポンド(約88万円)程度の追加予算が必要になる。車両価格に並ぶ金額だが、高すぎることはないと思う。

リフレッシュもカーライフとして楽しめる

自宅のガレージで修理できる人なら、リフレッシュする過程もカーライフの1つとして楽しめるだろう。あるいは予算を上乗せし、より状態の良い1台を探し、信頼のおける専門店でしっかり整備してもらえば、リスクは少しでも減らせる。

とはいえ、8000ポンド(約140万円)のボクスターを選んでも、メンテナンス・フリーで済む可能性は少ない。ある程度年式が古い中古車として、避けられない現実といえる。安い車両から厳選し状態を整える方が、この場合は賢明かもしれない。

ポルシェ・ボクスター(986型/1996〜2004年/英国仕様)
ポルシェ・ボクスター(986型/1996〜2004年/英国仕様)

フェラーリ・モンディアルへ惹かれるか、ポルシェ・ボクスターへ惹かれるかは、ブランドに対する思い入れでも変わってくるはず。それでも、中古のボクスターの価格価値には、改めて感心してしまう。

偶然にも、2台とも0-100km/h加速を6.4秒でこなす性能を誇った。ミドシップレイアウトで、運転を楽しめるシャシーを備えている。同程度の価格で売られている真新しいクロスオーバーやハッチバックより、魅力的に感じてしまうのは筆者だけだろうか。

協力:ケント・ハイパフォーマンス・カーズ社、UKカーズ・クラブ社

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ブレンナー

    Richard Bremner

    英国編集部
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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