1902psでインドの最高速記録へ挑戦 ピニンファリーナ・バッティスタ マヒンドラ・グループの誇り

公開 : 2023.06.28 08:25

あっさりバッティスタが成し遂げた記録更新

最初の直線が終わり、先が見えないほど長い、緩やかなバンクカーブの入口で加速を弱める。次のストレート手前で、290km/hに達しているのを確認。再び、アクセルペダルを目一杯倒す。

デジタル・スピードメーターが、勢いよく数字を増やしていく。320、330、340とカウントしていき、360が表示されたところで終了。バッティスタのスピードリミッターに届いた。2kmある直線の、中間辺りだった。

ピニンファリーナ・バッティスタ
ピニンファリーナ・バッティスタ

恐らく、さらに加速を続けることはできたはず。しかし、タイヤが耐えられない。データロガーには358.03km/hが記録されていた。インドにおける、自動車での最高速記録の更新を達成した。BEVの最速記録も。

筆者が降りると、AUTOCAR INDIAの女性スタッフ、レヌカ・キルパラニへ交代。彼女は357.10km/hを樹立し、インド人女性としての最高速も更新が叶った。バッティスタは、1日でインドの自動車記録を3つも更新したことになる。

今回の挑戦で示された、0-300km/h加速時間は10.49秒。0-400m加速は8.5秒、0-800mは13.38秒だった。

いずれの数字も感嘆させられるものだが、筆者が何より言葉を失ったのは、あっさりとバッティスタが成し遂げたという事実。極めてソリッドで、不安を感じさせなかった。300km/h以上で走っているという、実感すら薄いほど。

120kWhある駆動用バッテリーの搭載位置のおかげで、重心は低い。エアロダイナミクスも練られ、ボディが地面へ吸い付けられるように走る。一方、ステアリングの反応はダイレクトでシャープ。正確で丁寧な操舵が求められた。

駆動用バッテリーが最適な状態での実行

正直なところ、バッティスタは期待外れなほど簡単にリミッターまで加速してみせた。胸が張り裂けそうな緊張感や、背骨に響くような乗り心地とは、無縁だったといっていい。

二度と忘れることがない異次元の体験ではあったが、終始リニアでスムーズだったことも事実。あっけにとられるほど、300km/h超の世界が身近に感じられた。

ピニンファリーナ・バッティスタへ充電している様子
ピニンファリーナ・バッティスタへ充電している様子

ただし、事前準備は簡単ではなかった。駆動用バッテリーを持ち込んだDC急速充電器で理想的に充電し、ベストな状態にある僅かなタイミングで実行する必要があった。

1902psでの全開走行をある程度続けるには、充電量が60%以上あり、バッテリーの温度が55度以下であることが条件。この数字から外れると、マネージメントシステムが介入しパワーが絞られてしまう。

300km/h以上のスピードで走行すると、大量の電力が消費される。それによって、駆動用バッテリーは過剰に加熱してしまう。バッテリーが冷えた状態を見計らって、最高速へ挑む必要があった。

また、最初のバンクまでに充分な速度へ達し、次のストレートの半分で最高速に届かせるという、ペース配分も求められた。その後の、充分なクールダウンも。

執筆:ホルマズド・ソラブジー(Hormazd Sorabjee)
撮影:アクバル・マーシャント(Akbar Merchant )

記事に関わった人々

  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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