FRの通称デイトナ フェラーリ365 GTB/4 ベルリネッタ/スパイダー/コンペティツィオーネ 前編

公開 : 2023.07.02 07:05

前身の275 GTBから始まるデイトナの物語

今回、象徴的なFRフェラーリを振り返るため、英国編集部が用意したのは3台。丁寧に時間を重ねてきた、プレキシガラス・ノーズの365 GTB/4 ベルリネッタと、見事な状態にある365 GTS/4 スパイダー、手が加えられた365 GTB/4 コンペティツィオーネだ。

デイトナの物語は、前述の通り1964年の275 GTBから始まるといえる。ところがこちらは、さらに先代となる1952年の250GT SWBほど、優れた評価を得ていない。

レッド/ブルー・ストライプの365 GTB/4 コンペティツィオーネと、レッドの365 GTS/4 スパイダー、パープルのフェラーリ365 GTB/4 ベルリネッタ
レッド/ブルー・ストライプの365 GTB/4 コンペティツィオーネと、レッドの365 GTS/4 スパイダー、パープルのフェラーリ365 GTB/4 ベルリネッタ

その理由の筆頭だったのが、ピニンファリーナによる肉厚なスタイリング。当時のライバルモデルと比較して、美しく先進的な容姿とはいえなかった。それでも、ボディの内側は250シリーズから確実に進歩していた。

エンジンは、技術者のジョアキーノ・コロンボ氏が設計した3.3LのV型12気筒で、リアアクスル側にトランスミッションを配置するトランスアクスル構造を採用。サスペンションは、前後とも独立懸架式を得ていた。

1966年にはアップデートを受け、エンジンのヘッドにはカムシャフトが2本追加され、ツインカムに。キャブレターは3基増やされ6基となり、275 GTB/4へモデル名も改められている。

しかし、275シリーズの開発は限界を迎えていた。フェラーリは、ピニンファリーナへ後継モデルのデザインへ着手するよう、早々に依頼していたという。

その頃、ピニンファリーナで才能を発揮していたのは、レオナルド・フィオラヴァンティ氏。ミドシップのディーノ206の開発へ取り組むさなか、新しく導入された風洞実験技術を応用したデイトナのボディを描き出した。

ツインカムのティーポ251コロンボ・ユニット

開発コストを抑えるため、275シリーズのスチール製マルチ・チューブラー・シャシーを利用。センターセクションを約50mm拡大し、トレッドが広げられた。前後とも不等長のウイッシュボーンを用いた独立懸架式サスペンションも、先代譲りといえる。

5速マニュアルのトランスミッションは、重量配分を均等にする目的でトランスアクスル化。ブレーキは、前後にベンチレーテッド・ディスクが組まれた。

フェラーリ365 GTS/4 スパイダー(1971年式/英国仕様)
フェラーリ365 GTS/4 スパイダー(1971年式/英国仕様)

フロントに積まれたバンク角60度のV型12気筒エンジンは、当時トップクラスの性能を誇った。1966年のフェラーリ365 カリフォルニアから投入された、アルミニウム製のティーポ251コロンボ・ユニットは、275シリーズより大排気量の4390ccを得ていた。

また365 カリフォルニアではシングルカムだったが、275 GTB/4のようにツインカムへ変更。スチール製のクランクシャフトはメインベアリング7枚が支え、バンク内に6基のツインチョーク・ウェーバー・キャブレターが並んだ。

その結果、最高出力は357ps/7500rpmを達成。最大トルクは43.8kg-m/5500rpmを発揮した。エンジンの高さを抑えるため、ドライサンプ化されていた点も特長だろう。

アルミニウム製の2シーター・ボディを製造したのは、スカリエッティ社。フェラーリとは、長年のパートナー関係にあった。

365 GTB/4の初期のプロトタイプが完成したのは、1967年の秋。275 GTB/4用のエンジンが載り、スタイリングもフロント周りを中心に先代の面影を残していた。

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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