FRの通称デイトナ フェラーリ365 GTB/4 ベルリネッタ/スパイダー/コンペティツィオーネ 中編
公開 : 2023.07.02 07:06
高性能モデルの新水準に達していた、365 GTB/4「デイトナ」。公道の王者といえたフェラーリを、英国編集部がご紹介します。
流行へ左右されない純粋な美しさ
フェラーリ・デイトナのトレードマークといえる、シャークノーズのフロントエンドが完成したのは、4番目のプロトタイプからだといわれている。かくして、1968年10月のパリ・モーターショーで365 GTB/4は華々しくデビュー。大きな反響を呼んだ。
このモデル名は、1気筒あたりの容量が365ccであったことと、カムシャフトが4本組まれていたことが由来。同時に、1967年のデイトナ24時間レースでフェラーリ330 P4が1-2フィニッシュを飾ったことをきっかけに、デイトナとも呼ばれるようになった。
フェラーリの歴史へ詳しい、パット・ブレーデン氏とジェラルド・ルーシュ氏によると、通称「デイトナ」と呼び始めたのは社内の開発部門。デビュー前にそれがリークされていたものの、フェラーリは365 GTB/4として発表したそうだ。
2023年に見るデイトナは、半世紀以上を経ても純粋な美しさで見る者を惹き込む。最高級のテイラード・スーツのように流行へ左右されず、クラシックながらも誰もが認めるであろう端麗さだと思う。
サイドラインはエレガントに後方へ流れ、表面へ与えられた装飾的な要素は最小限。フロントフェンダーとリアフェンダーの間を、折り目の強いキャラクターラインが走る。伝統的な名車と同じく、停まっていても240km/hで走っているように見える。
現在もアウトバーンで240km/h以上のドライブ
今回ご登場願った365 GTB/4 ベルリネッタは、ギルバート・スミス家が代々所有する1台。オリジナルのスタイリングの特徴を、最も鑑賞しやすい。
珍しいヴィオラ・パープルのボディ塗装に至るまで、殆どオリジナル状態が保たれている。1970年8月に初代オーナーが支払った金額は、8830ポンド。当時の英国では、最も高価な2シーターモデルだった。
現在の走行距離は約11万2000km。現オーナー家は17年間所有しているが、これまで4万4000kmほど距離を伸ばしたそうだ。現在も、アウトバーンで240km/h以上のドライブを楽しんでいるとか。
53年前のイタリア車だと考えると、優れた品質にあることへ驚く。初期のモデルらしく、フロントノーズの4灯ヘッドライトは固定式で、プレキシガラス製のカバーが覆っている。
サイドウインドウ後端のモールと一体になったハンドルを引き、素晴らしい風合いに熟成されたドライバーズシートへ腰を下ろす。シートクッションは打ち直されているが、表面のレザーは新車時のままらしい。
インテリアでは、当時のアイテムに新しい部分が融合している。ウッドリムのナルディ・ステアリングホイールが、寝かされたように伸びる。アルカンターラで張り直されたダッシュボードには、巨大なスピードメーターとタコメーターが並んでいる。