FRの通称デイトナ フェラーリ365 GTB/4 ベルリネッタ/スパイダー/コンペティツィオーネ 後編

公開 : 2023.07.02 07:07

ボディサイドに顔を出す2本のエグゾースト

これらのコンペティツィオーネは、フェラーリのワークスチームが競わせることはなかった。しかし、1971年の総合5位や、1972年から1974年のクラス優勝など、ル・マン24時間レースでは確実な結果を残している。

今回、デイトナ・コンペティツィオーネをお持ちいただいたのは、フェラーリのレストアなどを得意とするDKエンジニアリング社。当時に正規で作られた車両ではなく、クラシックカー・レース参戦のため、1983年にフェラーリでコンバージョンされた1台だ。

フェラーリ365 GTB/4 コンペティツィオーネ(C S3コンバージョン)
フェラーリ365 GTB/4 コンペティツィオーネ(C S3コンバージョン)

イタリア・モデナへ持ち込まれ、オリジナルと同様にブランドーリ社によってボディはシリーズ3仕様へ変更されている。レッドのボディに、ブルーのストライプが鮮やか。エンジンは、名門のサウロ社が手掛けた。

大きく張り出したリアフェンダーの直前、ボディサイドに顔を出す2本のエグゾーストが、コンペティツィオーネの証。ドアを開くと、ブルー・ファブリックのバケットシートと、サベルト・ハーネスが出迎えてくれる。

左ハンドル車で、メーター類などは通常の量産仕様と大きな違いはない。イグニッションキーを回すと、クランキング後に勇ましいアイドリングが始まる。グッドウッド・フェスティバルのピットレーンのように、エンジンの脈動するノイズが周囲を満たす。

記録によれば、シーズン2とシーズン3のコンペティツィオーネは、通常のベルリネッタより約180kgも軽量だったという。実際、このクルマも乗り比べてみると軽快に感じられる。

エンツォ自ら開発を指揮した最後の量産車

最初のコーナーから明らかに意欲的に回頭し、頂点めがけて流れていく。ロールケージが組まれているおかげで、ボディ剛性も明らかに勝る。高速域では、まったく次元の異なる身のこなしを披露する。

V12エンジンはピーキーで痛快。最高出力は8300rpmと高く、レッドラインへ迫るほど、サイドエグゾーストから放たれる咆哮が高音域へ変化していく。魅了されずにいられない。

フェラーリ365 GTB/4 コンペティツィオーネ(C S3コンバージョン)
フェラーリ365 GTB/4 コンペティツィオーネ(C S3コンバージョン)

デイトナは、フェラーリの創業者、エンツォ・フェラーリ氏が自ら開発の指揮をとった、最後の量産車だといわれている。その最終進化形として、コンペティツィオーネは非の打ち所がない仕上がりにある。

歴代のクラシック・フェラーリと、直接的なつながりを持つというだけではない。エンツォとの直接的な結びつきを持つフェラーリでもあり、今もなお羨望を集めて当然といえるだろう。

協力:UTACミルブルック社、DKエンジニアリング社、ギルバート・スミス家、コッティンガム・ブルーチップ・ロンドン社

フェラーリ365 GTB/4のスペック

英国価格:9998ポンド(1971年時)/60万ポンド(約1億500万円)以下(現在)
販売台数:1284台(GTB/4)/122台(GTS/4)
全長:4420mm
全幅:1760mm
全高:1244mm
最高速度:280km/h
0-97km/h加速:5.4秒
燃費:4.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1601kg(GTB/4)/1420kg(C S3)
パワートレイン:V型12気筒4390cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:357ps/7500rpm(GTB/4)/456ps/8300rpm(C S3)
最大トルク:43.8kg-m/5500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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