三菱デリカ・ミニ なぜeKクロス・スペースから路線変更? デリカらしさを検証

公開 : 2023.06.20 12:00

デリカ・ミニに「デリカらしさ」は

デリカ・ミニに「デリカらしさ」はあるのだろうか。

結論から言えば、フロントデザインのほかにもしっかりと宿っていた。わかりやすいのは、4WDモデルが履くタイヤだ。

デリカ・ミニ4WDモデルのタイヤはeKクロス・スペース時代やFFモデルに対して直径が20mm大きなサイズとなる。最低地上高は10mm高くなった。
デリカ・ミニ4WDモデルのタイヤはeKクロス・スペース時代やFFモデルに対して直径が20mm大きなサイズとなる。最低地上高は10mm高くなった。

4WDモデルのタイヤはeKクロス・スペース時代やFFモデルに対して直径が20mm大きなサイズとなっている。そのタイヤのおかげで、サスペンションストローク自体は変わっていないが最低地上高は10mm高くなった。それが荒れた路面を走る際にメリットとなるのは言うまでもない。もちろんタイヤのエアボリュームの増大も悪路走行性能向上に寄与する。

加えて4WDモデルは、サスペンションも専用の味付け。バネやスタビは変更ないが、ショックアブソーバーの減衰がよりしなやかに足が動くようにチューニングされた。

つまり、4WDモデルはよりオフローダーに近いテイストでメカニズムにも手が入っていて、よりデリカらしさを継承しているのである。

昨今はデリカ・ミニのようにクロスオーバーSUVテイストの軽自動車スーパーハイトワゴンが増えている。具体的にいえばスズキスペーシア・ギアやダイハツタント・ファンクロスだが、それらのなかでサスペンションまで手を加えてオフローダー寄りにしているのはデリカ・ミニだけ。そんな差別化からも、三菱のこだわりがひしひしと伝わってくる。

また、デリカ・ミニはFFモデルも含めて全車に「グリップコントロール」という機能が組み込まれているが、それも進化した。

オフローダーっぽい乗り味が息づく

グリップコントロールは雪道やダートなど滑りやすい路面でタイヤの空転を抑える機構だが、これまでは空転を抑えるためにエンジン出力が絞られすぎて前へ進めなくなる状況もあった。深く積もった雪の路面などでだ。

しかしデリカ・ミニはそういった路面の場合、スロットルを絞りすぎずタイヤを空転させて前へ進む制御を追加。その制御切り替えはクルマが状況を検知して自動でおこなわれるので、ドライバーが操作する必要がないというのも、デリカ・ミニのような一般向けのモデルとしては正しい判断だろう。

スーパーハイトワゴンは後席の広さ(本家デリカD:5より前後席間距離が広い)や乗り降りのしやすさといった実用性は見事なレベルにある。
スーパーハイトワゴンは後席の広さ(本家デリカD:5より前後席間距離が広い)や乗り降りのしやすさといった実用性は見事なレベルにある。

そんなデリカ・ミニを運転して好印象だったのは、オフローダーっぽい乗り味が息づいていたことだ。試乗車は売れ筋の「Tプレミアム」だったが、もともと重心の高い車体に加え大径タイヤやサスペンション変更などによりロール感をそれなりに感じた。しかしデリカだと思えば納得できるし、むしろ自然なロール感が心地いい。

そもそも重心の高さや全高に対するトレッドの狭さなどから路面に吸い付くような安定性などを期待できない軽スーパーハイトワゴンの場合は、無理に姿勢移動を抑え込むよりもSUVのようなしなやかな味付けにしたほうが挙動に無理がないし、多くの人を幸せにするのではないかと改めて感じたのだ。

ターボエンジン搭載車であれば高速道路や峠道を走っても加速性能に不足はないし、なによりスーパーハイトワゴンは後席の広さ(本家デリカD:5より前後席間距離が広い)や乗り降りのしやすさといった実用性は見事なレベルにある。加えて親しみのある雰囲気となったことで、人気が急上昇したのも当然といえば当然の結果なのだろう。

自分たちの得意とする路線を守る。デリカ・ミニへの移行で実行したそんな三菱の判断は、正解だったと考えて間違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。
  • 小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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