時代を超越したデザイン メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン(W460型) 英国版クラシック・ガイド 前編
公開 : 2023.07.08 07:05
メルセデスの長寿モデル、ゲレンデヴァーゲン。初期のW460型を中心に、その魅力と注意点を英国編集部がご紹介します。
生産はシュタイアー・ダイムラー・プフ社
技術者のエーリヒ・レドヴィンカ氏が設計した、初代メルセデス・ベンツ・ゲレンデヴァーゲン、後のGクラスは、オーストリアに拠点を置くシュタイアー・ダイムラー・プフ社が生産を担った。彼はその企業を創業した、ハンス・レドヴィンカ氏の息子だった。
エンジンとトランスミッション、アクスル、ステアリング系統は、ドイツ・シュツットガルトのメルセデス・ベンツ工場から都度輸送。一部のGクラスでも、2000年まで「プフ」と記されたエンブレムが貼られていた。
軍用車両として考案されているが、堅牢さから今でも人気は高い。SUVへ支持が集まり、クラシックカーに対する関心度も増しており、市民からの注目度は上昇中。現行型は、英国陸軍も汎用車両として登用を検討しているとか。
ゲレンデヴァーゲンの進化の過程は複雑で、多様なエンジンが搭載されてきた。質実な軍用仕様を除くと、オリジナルといえるW460型のゲレンデヴァーゲンが生産されたのは、1979年から1991年にかけて。
1990年にはラグジュアリーなオフローダーとして、W463型のGクラスが登場。また汎用的なW460型の後継として、W461型が1992年にリリースされている。W463型は2018年にビッグ・マイナーチェンジを受け、現在も生産されている。
ゲレンデヴァーゲンが英国のディーラーで買えるようになったのは、1982年から。英国仕様の場合、前後のデフロックと四輪駆動のハイとロー・レシオが組まれ、パートタイム方式で後輪駆動へ切り替えることが可能だった。
軍用車が発端の高級車 耐久性で定評を構築
直線基調で実用性重視のスタイリングは個性的でもあり、初代ランドローバー・レンジローバーより全高は約175mm高く、約75mm短く、幅も狭かった。ディスカバリーのサイズを決める際、参考にしたといわれている。
初代の5ドアボディの場合、車重は200kgほどレンジローバーより重かったが、最高出力は25psほど上回った。トランスミッションも3速オートマティックに対して4速で、よりスムーズな走りを実現していた。
当時のAUTOCARは、活発さではゲレンデヴァーゲンが有利で、低速域での牽引力や燃費ではレンジローバーが上回ると評価している。フロントのアンチロールバーは太く、ボディロールを抑制していたが、乗り心地は硬めといえた。
車内は広々としており、英国仕様ではオプションの折りたたみシートを装備すれば、定員を9名に増やすことが可能だった。内装は高耐久なクロスかビニール張りという選択肢で、ウインチと補助ヒーター、エアコンなどをオプションで装備できた。
軍用車が発端ということで、耐久性で定評を築いたものの、動力性能などを比較すれば割高だったことは事実。英国での販売はさほど振るわず、当初からメルセデス・ベンツの高級車という扱いだった。
最新のGクラスは、最高出力600ps以上を誇る例もある。だが初期のW460型も、本来の性能を引き出せば運転を充分に楽しめる。