同じ土俵に登った2台 BMW M3 ツーリング vs ランドローバー・レンジローバー・スポーツ 前編

公開 : 2023.07.01 09:45

今まで直接は比較されなかった、M3とレンジローバー。それを叶えたツーリングとスポーツの特徴へ、英国編集部が迫ります。

M3とレンジローバーに押し寄せた変化の波

1986年に、BMW M3とランドローバー・レンジローバーが似たような体験を与えるクルマだと評価したら、恐らく筆者はAUTOCARから追い出されていただろう。だが、2023年なら許されそうだ。

40年ほど前、BMWはレース参戦規定に合わせるべく、軽量な2ドアクーペをリリースした。他方のランドローバーは、人類が初めて月面着陸した翌年、1970年に発売した初代レンジローバーを現役としてラインナップさせていた。

グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ
グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ

どちらも純粋なコンセプトをもとに、原型といえる望ましいプロダクトへ仕上がっていた。当時の自動車マニアからすれば、この2台が並ぶガレージは理想的な姿だったといえる。

それ以来、自動車は大きく様変わりしている。ロータスを例に取れば、中国の武漢でバッテリーEVのクロスオーバーを生産し始めている。車重が2.4tもある、最新のエレトレだ。

M3とレンジローバーにも、変化の波は押し寄せている。お互いに比較されるような、派生版が誕生している。ガレージへ2台を並べる必要性は薄まったといえる。そこで英国編集部は、積極的に比べてみることにした。

グレートブリテン島の中西部、スノードニア国立公園には、最高出力の合計が1000馬力を超え、英国価格が20万ポンド(約3500万円)以上になる精鋭が集った。ボディカラーはレッドとグリーンで補色関係にあるが、ターゲット層は共有している。

クルマを強く特徴付ける大きな荷室

この関係性にあるのが、M3の「ツーリング」と、レンジローバーの「スポーツ」。もちろん、両車は明確に立ち位置が異なる。一方はオーバーステアで獰猛にコーナーを制覇する能力が与えられ、もう一方は悪路へひるまない走破性を備えている。

しかし、どちらもクルマを強く特徴付ける、大きな荷室を背負っている。もっとも、BMWの方はカッコイイと開発部が考えたという理由で、誕生したようではあるが。

グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ
グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ

加えて、周囲と差別化するため、巨大なパワーが与えられている。SUVのレンジローバー・スポーツですら、アストン マーティンDB9の0-100km/h加速を上回るダッシュ力を秘めている。

英国では価格も近い。恐ろしく速く、ドライバーを惹き込むほど情感豊かでありながら、とても実用的。アウディSQ7やジャガーFペイス SVR、ポルシェカイエン・ターボより、「本物感」も強い。

見た目の違いは小さくない。それでも、両者を接近させる要素はふんだんにある。今でも主戦場は、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェに対し北米大陸に広がるような荒野で、異なるとしても。

M3 ツーリングの場合、初代レンジローバーからレンジローバー・スポーツが生まれたほど、飛躍的な進化は遂げていない。高性能モデルのアイコンの1台といえるM3には、2代目となるE36型の時代から4ドアサルーンが存在していた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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