同じ土俵に登った2台 BMW M3 ツーリング vs ランドローバー・レンジローバー・スポーツ 前編
公開 : 2023.07.01 09:45
ハードコアであることを隠さない見た目
世代を重ね、2020年に入り現行のG80型へモデルチェンジすると、進化は一気に加速した。歴代初となる四輪駆動システムが採用され、全天候型のスーパーサルーンと呼べる能力を獲得。そして2022年、新たなシルエットが与えられた。
ステーションワゴンのボディを得たM3は、いわば鬼に金棒。長く伸ばされたルーフラインをまとい、荷室容量はリアシートを倒せば1501Lまで広がる。これは、レンジローバーを上回る数字だ。
現実を見た車高設定はそのまま。ワダチや舗装の剥がれが多いスノードニアのワインディングを、構わず攻め込める。フェラーリGTC4 ルッソのフォルムも美しいが、遥かに気を使うことは間違いない。
BMWマニアなら、E46型のM3にツーリングの試作車が存在したことをご存知かもしれない。それから数世代を経て、充分な予算を用意すれば、実際に購入が可能になった。
スポーティなシートにカーボンセラミック・ブレーキなどのオプションが載った試乗車の英国価格は、10万150ポンド(約1753万円)。うなだれるほどお高いが、やはり素晴らしいクルマだ。白いモヤが一帯を包むが、マン・グリーンのボディが存在感を放つ。
シルエットはステーションワゴンでも、間違いなくアグレッシブ。ウイングを外したポルシェ911 GT3がツーリングを名乗るように、ハードコアであることを隠さない。
フェンダーラインは膨らみ、大きなエアインテークが切り込まれている。無二の趣を醸し出しているのが、長く伸ばされたリアエンド。ひと昔前のボルボと重なる。
走りがいのある道でドライバーを喜ばせるSUV
かたや初代レンジローバーは、アメリカでの高級SUV需要へ応えるべく、1970年に誕生。当時高水準にあったローバー製サルーンの豪華さと快適さ、高性能モデルに迫る動的能力が、スタイリッシュなステーションワゴン風のオフローダーへ融合された。
意欲的なレンジローバー・スポーツが枝分かれするように誕生したのは、3代目だった2004年。ポルシェ・カイエンやBMW X5へ対峙するためだった。
当初から電子制御アンチロールバーにマルチチャンバー・エアサスペンション、後輪操舵システム、可変ステアリング、トルクベクタリング機能などを搭載し、ハイテクだった。最新版は高剛性なモノコックをベースに、高次元な動的能力を獲得している。
果たして、3代目のレンジローバー・スポーツを、ドライバーズカーだと呼べるだろうか。異論はあるかもしれないが、スノードニアの走りがいある道へV8エンジンを積んだP530を進めれば、ドライバーを喜ばせるSUVだという事実が見えてくる。
カーブが連続する道を、不安感なくシリアスに攻め込みたいなら、BMW X5 Mの方が好適だろう。車重が2430kg、最高出力が530psあるレンジローバー・スポーツ P530は、得もいわれぬ優雅さを伴って駆けていく。
ボディロールは高性能サルーン並みに小さい。上下方向の姿勢制御には、レンジローバーらしい高級感がある。ストロークの長いサスペンションと、アクティブ・アンチロールバーが、しなやかな乗り心地を保つ。
この続きは後編にて。