韓国キア「ポストSUVの到来」近い? 自動車デザイナーが語るスタイリングの未来

公開 : 2023.06.23 06:25

SUVの時代は終わりつつある?

ハビブ氏は、「製品間に一定の一貫性を持たせながら、同時に独自の特殊要素を持つ製品ポートフォリオ」を実現したいと語る。しかし、今後のモデルでは必ずしも、EV6とEV9のように明確な差をつけて差別化を図るわけではないという。「この2台ほど違うものになるとは思いません。これはわたし達が望むブランド構築のアプローチではありません。一貫性と認知度を備えたブランドを築きたいのです」

「しかし同時に、わたし達は年間300万台近くを製造しており、市場ごとに異なるタイプの車種を製造しているため、すべてが同じ型から作られるわけではありません」

キアEV9
キアEV9

実際、EV9は、スポーティなEV6よりも古典的なSUVとして認識されているが、そのデザイン理念は、EV6で確立された特徴からのシフトを意味するものではない。

「正直なところ、何も捨てていません。わたし達は教義に基づかないデザイン哲学を発展させようとしました。他のクルマでも繰り返されるような原則はあるかもしれませんが、その実行や使い方はオープンにする必要があると思います」

では、今日のデザイナーにとってのキラー・クエスチョンとも言える、「SUVはいつまで続くのか?」という疑問についてはどう考えるのだろうか。

「わたしは、人々が将来どうなるかを語れるようなふりをするのは好きではありません」とハビブ氏は謙虚に答える。しかし、キアの南陽(ナムヤン)デザインスタジオの中で、このことが議論されているのは明らかだ。

「SUVは、人々がMPV(ミニバン)の運転に飽き飽きしたことから学んだ結果かもしれません」と彼は答え、さらに断定的に、こう付け加えた。「ポストSUVがやってきます」

ここ数か月、一部の自動車ブランドは、伝統的なSUVの時代が終わりつつあることをほのめかしている。

SUVへの需要がかつてないレベルにまで急増している中、空力効率と持続可能性への注目が高まり、再考が必要となっているのだ。

「わたし達はいろいろなことを試してみるつもりです。もっと効率的に空間を作る方法があると思います」

トランスミッショントンネルとエンジンルームが不要になったため、インテリアデザインにまったく新しいアプローチが可能となった。近未来のクルマは理論上、これまでと同等の実用性と快適性を実現するために、これまでと同じサイズや形状をとる必要はない。

「個人的には、本当にクールなバンができると信じています」と彼は言い、キア・カーニバルを「クール」で「望ましい」MPVとして挙げた。しかし結局のところ、ハビブ氏にとっては単なるセグメントの問題ではない。「技術の進歩は目に見えるものでなければなりません」

「SUVが技術の進歩を示すことができなければ、生き残ることはできません。もし、進歩を感じられるようなSUVを作ることができれば、SUVは生き残ることができると思います。ですから、実際のタイポロジーそのものよりも、『何を象徴しているのか』が問題なのだと思います」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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