頂点級SUVを体験! メルセデス・ベンツEQS SUV 3t級・3列シートの高級EVは「あざとさ抜き」の走りが魅力
公開 : 2023.06.23 12:50
3t級の重量 走りの本質は扱いやすさ
ショーファー用途にも高い資質を備えたEQS SUVだが、ドライバーにとって退屈なモデルかというとそれは見当違いも甚だしい。
メルセデス車とBEVの両面でオーナードライバー向けのトップカテゴリーに相応な性能を楽しめる。
パワートレインは前に88kW、後に178kWを配したツインモーター式の電動4WDを採用し、システム最高出力は265kW、最大トルクは800Nm(81.6kg-m)に達する。
中速巡航から一気に踏み込めば3t近い車重をものともせずにダッシュ。性能チェックのために試してみたが、唐突に突き出されるような“荒さがない加速”には感心させられたものの、一般ユーザーなら使う場のない速さである。
ただ、この速さは同車にとっては余芸と言うべき側面であり、本質的な魅力は重量やサイズを意識せず、なおかつ多様な状況での扱いやすさだ。
その中には、自動制御モードで前走車との車間距離・速度差に応じてエンブレ回生する制御も含まれるが、真価はドライバーの意志を読み取るようにコントロールされたドライバビリティだ。
穏やかなペダルコントロールでは繋ぎの滑らかさ、リズミカルな操作なら小気味よく、しかも何れも違和感は皆無。
駐車場でも、渋滞路でも、速度変化の激しい高速でも思い通りに扱える。強力な“電動の力”と“ドライバーの感性”とのフィットのよさが1番の見所だ。
乗り心地は? 肝はメルセデスらしさ
車重は3t近く、全高は1.7mを超える。
相応に引き締まったサスチューンとなるのは仕方ない。……と覚悟はしたものの予想外に路面当たりは穏やか。
細かな段差乗り越えや荒れた路面からの突き上げや振動が少ない。それはコンフォートモード以外を選択していても変わらない。
駆動系やバッテリーなどの重量物は低くレイアウト。見た目に反して低重心設計。
そこにエアサス+電子制御ダンパーがサスのストローク量とストローク速度を能動的に制御。収束よく滑らかな乗り心地を実現していた。
操安性は他のメルセデス車同様にセオリーに則ったものであり、切れ味等々のあざとい演出はない。
応答遅れなく操舵とリンクした回頭反応、回頭と同時に滑らかに立ち上がる旋回力(横G)。路面を踏み締めていくようなコーナリングが心強く、ドライバーに与えるストレスも少ない。メルセデス車らしいバランスをそのままにレベルアップしたと考えればいいだろう。
付け加えるなら操安性向上にも寄与する電子制御後輪操舵システムは、極低速域では最大10°逆位相操舵を行い小回り性を向上。
小さな最小回転半径と少ない内輪差で、取り回しのよさも同サイズSUVでは群を抜く。生活の場での使い勝手に気を配るのもメルセデス車らしく好感が持てる。