小さな波は起こせる BYDドルフィンへ試乗 多少の弱点も許せるコスパ 航続426km

公開 : 2023.07.26 08:25

英国市場にも上陸したBYD。アット3に続くバッテリーEVの小型ハッチバックを、英国編集部が公道で評価しました。

駆動用バッテリーは44.9kWhか60.4kWh

いよいよ英国市場にも参入した、中国のBYD。今回試乗したドルフィンは、この土地でも主要な自動車メーカーになりたいと考える、同社の重要な2歩目の足がかりとなる。

既に英国でも、小型クロスオーバーのアット3の販売は始まっている。このドルフィンは、フォルクスワーゲンID.3よりひと回り小さいハッチバックだ。

BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)
BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)

スペインのサーキットでの試乗レポートはご紹介済みだが、今回はより長い時間、一般道での走行が許された。詳しく実力を評価していこうと思う。

アット3とは異なり、比較的個性の薄いスタイリングが包むアーキテクチャは、BYDのeプラットフォーム3.0と呼ばれるもの。自社製造のリン酸鉄リチウム(LFP)駆動用バッテリーが、フロアに敷き詰められている。

このLFPバッテリーの特徴は、希少なコバルトを使用しないこと。従来の乾電池のようなセルではなく、細長く薄い形状をしており、体積を抑えたことも強みだ。

英国のエントリーグレードとなるアクティブの場合、駆動用モーターの最高出力は95psで、駆動用バッテリーの容量は44.9kWh。航続距離は339kmがうたわれる。ブースト・グレードへ格上げすると、最高出力は176psへ上昇。航続距離は310kmへ短くなる。

コンフォートとデザイン・グレードを選ぶと、駆動用バッテリーは60.4kWhへ増加。駆動用モーターは203psへ強化され、航続距離は426kmへ増える。急速充電能力は、小容量のバッテリーで最大60kWhまで対応。大容量の方では、80kWhへ増える。

アット3に似ているドライビング体験

今回試乗したドルフィンは、203psのコンフォート・グレード。ところが、前回とは異なり加速が不自然に穏やか。疑問を感じ確かめてもらうと、パワーを抑えアクセルレスポンスが緩くなる、工場出荷時のデリバリー・モードになったままだった。

スペインでは充分に活発に感じられ、高速道路の速度域まで加速が鈍ることはなかった。設定ミスということで、動力性能を確かめるのは機会を改めるしかない。

BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)
BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)

それでも、全体的なドライビング体験はアット3へ近い。サスペンションはソフト志向で、乗り心地は悪くないものの姿勢制御は緩め。カーブ途中の厄介な隆起部分では、安定性が少し崩れる様子もあった。

ドルフィンは、サスペンションのストロークがアット3より僅かに短い。そのため、速度域全般で入力をなだめるのに手を焼いているようでもあった。ステアリングホイールへは、ドライブモードを変えてもほとんど路面の感触が伝わってこない。

試乗したドルフィンが履いていたタイヤは、リンロン社のコンフォートマスター。少なくとも暖かく乾燥した路面では、不満ないグリップ力を提供してくれていた。

トラクション不足やトルクステアは感取されなかったものの、パワーが低いデリバリー・モードなことが影響しているはず。回生ブレーキの効きは、もう少し強い方が運転しやすいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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