フォルクスワーゲンCEO「レトロ路線は行き詰まる」 ビートル復活を否定 車名に厳格な基準
公開 : 2023.06.27 06:05
フォルクスワーゲン・ビートルがEVとして復活するのではないかという期待は、同社幹部によって否定されました。「レトロ」な車名を安易に使うことはないものの、ゴルフやティグアンなどは引き継がれる可能性があります。
ビートルは「役目を終えた」?
フォルクスワーゲンのCEOであるトーマス・シェーファー氏は、今後のEVで「ビートル」を復活させることはないとし、後方ではなく前方を見据えることが重要であると語った。
フォルクスワーゲンで長い歴史を持つ車名については、ここ数か月でにわかに話題となっている。以前、シェーファー氏はAUTOCARに対し、「ゴルフ」と「GTI」は電動化時代においても存続する可能性が高いと語っていたが、他にもいくつかの名高い車種が、エンジン車からEVへの移行後も存続する可能性があることを示唆した。
3代目となる次期ティグアンの量産前試乗会でAUTOCARの取材に応じたシェーファー氏は、「ゴルフやティグアンのように、長い間フォルクスワーゲンを支え、投資してきた、伝統的で成功した名前を捨てるつもりはありません」と車名の重要性を強調した。
「もちろん、フォルクスワーゲンの歴史にはたくさんの名前がありますが、本当に象徴的で世界的なものはほんの一握りしかありません。代表的なものはゴルフ、ティグアンですが、シロッコやアルテオンはどうか? おそらくそうではないでしょう。これはわたし達のネーミング哲学の一部であり、現在最終決定の段階にあります」
フォルクスワーゲンで(あるいは世界で)最も長く親しまれているネーミングの1つである「ビートル」が、同社の基準に基づいて復活する可能性はあるかと尋ねると、シェーファー氏はきっぱりと答えた。「そうは思いません。役目を終えたクルマもあるのです。復活させる意味はないでしょう」
「100%確実とは言えません。しかし、今のわたしの立場からすれば、考えられないのです。シロッコと同じで、1つの時代を迎え、その後、再解釈に基づく新モデルが登場しました。それをまた繰り返すのでしょうか? わたしはそうは思いません。そして、すべての技術とそれに伴うコストのバランスを取りながら前に進むためには、可能な限り最善の場所に資金を投じなければなりません」
フォルクスワーゲンは6月12日、近日公開予定のアニメ映画『ミラキュラス(原題:Miraculous superheroes Ladybug and Cat Noir)』で主役が乗るビートルのEVコンセプトカーを公開している。
また、ビートルは、元CEOのヘルベルト・ディース氏の時代に「エモーショナル」なクルマを導入する計画の一環として、ID.Buzzの流れを汲む4ドア電動ハッチバックとして復活する可能性が取り沙汰されていた。
現CEOのシェーファー氏によれば、ID.Buzzはフォルクスワーゲンのヘリテージ(1950年代のタイプ2にインスパイアされたもの)を強く意識しているが、同様の「リバイバル」でレトロ路線を歩みたいわけではないという。そして、ノスタルジーに浸るのは、やがて「行き詰まるだろう」としている。
「ブランドは常に自らを改革し、新しいものを出していかなければなりません。ビートルの時代が終わり、ゴルフが登場したときと似ています。新しいモデルを投入すると同時に、既存のモデルを最適化する必要があるのです」
「わたし達は自分たちの伝統に誇りを持っています。何の問題もなく、振り返ってみれば、それは誇るべきものです。しかし、それだけがわたし達を定義するものではありません」
同氏は、最近の車名のいくつかは復活する可能性があるとしながらも、新型車がその精神を厳格に守っている場合にのみ可能であると述べた。「あるクルマを、ゴルフやパサートやティグアンと呼ぶなら、その遺伝子を受け継いでいなければなりません。同じでないものをそう呼ぶことはできません」
「今の自動車業界には、古典的な名前を取って、まったく違うクルマにつけた例があります。……具体的な名前を口にするつもりはありません」