ポルシェ・タイカンへ挑む ポールスター5 プロトタイプへ同乗 最高出力886ps

公開 : 2023.07.09 08:25

ポルシェ・タイカンのライバルと目される、ポールスター5の試作車へ英編集部が同乗。新基準の質感に、強く感銘を受けたようです。

ポールスター・ブランドの成熟度を高める

まったく新モデルの仕上がりを確かめるのに、通常は助手席へ座っただけではわからない。しかし、ずば抜けた完成度にある場合、運転席へ座らずとも能力の高さを実感できることがある。

グレートブリテン島にある自動車試験コース、MIRAのハンドリング・サーキットで同乗したポールスター5は、まさにそんな1台だった。ここは、英国でクルマの性能を評価する際の定番施設。筆者も定期的に訪れており、コースのことは理解しているつもりだ。

ポールスター5 プロトタイプ
ポールスター5 プロトタイプ

この開発プロジェクトでシャシー技術者を率いる、若干31歳のクリス・バグリー氏と、ポルシェタイカンについて雑談を交わす。「これはポールスター・ブランドの成熟度を高める機会です」。と口にする。

カモフラージュされた、低いボディをまとうポールスター5のステアリングホイールを握る彼は、コース途中のヘアピンカーブへ果敢に突っ込む。旋回させつつ、リアアクスルへトルクを一気に送る。タイヤのグリップ限界を破り、パワースライドしてみせた。

まったく知らない人が目撃したら、デザイナーのシド・ミードが描き出したBMW M5が、本域で攻め立てられているように見えるかも。プラグイン・ハイブリッドのグランドツアラー「1」や、小型クロスオーバーの「2」では、想像し得ない振る舞いといえる。

Mモデルのようなドリフト 感動の乗り心地

長いホイールベースのシャシーでも、巨大なトルクを与えれば、パワースライドは決して難しいことではない。それでも、助手席からでも、その繊細な操縦性には度肝を抜かされた。ポールスターは、新たな領域へ踏み出そうとしている。

この「5」は、スウェーデン・ヨーテボリに拠点を置くポールスターが、既存のボルボ製プラットフォームをベースに開発を進めているわけではない。ロータスマクラーレンなどで経験を積んだ有能な技術者によって、英国のMIRAでゼロから設計されている。

ポールスターのシャシー技術者、クリス・バグリー氏(右)と、筆者(左)
ポールスターのシャシー技術者、クリス・バグリー氏(右)と、筆者(左)

リアタイヤがタイトコーナーで緩やかに外へ流れて、元のラインへ戻る。その一連の挙動は、決まり文句ではあるが、バターの表面をなぞるように滑らか。

バグリーは深いドリフトアングルへ持ち込み、姿勢を徐々に立ち直していく。専用開発されたミシュラン・タイヤは、長いボディの進行方向を巧みに保持しながら、出口の接近とともに鋭い加速を受け入れる態勢を整える。

乗り心地は安定していて、落ち着いている。路面へしなやかに追従する。アンダーステアも想像以上に抑えられている。

まだ開発の真っ最中なだけに、5の技術的な情報は明らかになっていない。発売は2025年が予定されているが、直前まで公表されることはないだろう。

それでも、BMW Mモデルのように派手なドリフトと、感動してしまう乗り心地で、強い興味を抱かずにはいられない。5が備える能力の幅が極めて広いことを、間接的に示唆している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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