ポルシェ・タイカンへ挑む ポールスター5 プロトタイプへ同乗 最高出力886ps

公開 : 2023.07.09 08:25

広大といっていい車内空間

1つ知って唸らされたのは、一般的な固定式のコイルスプリング・サスペンションが組まれているという事実。エアサスではなく、可変式ダンパーのモード設定もないという。

英国価格10万ポンド(約1750万円)を超えるモデルとしては、少々ベーシックなシャシーに思える。しかし、平滑とはとてもいえないMIRAのハンドリング・サーキットで、先述の見事な乗り心地を披露してみせた。英国の一般道での制御が楽しみだ。

ポールスター5 プロトタイプ
ポールスター5 プロトタイプ

車内空間は広い。特にリアシート側は広大といっていい。ポルシェタイカンが、フォルクスワーゲン・ルポのように感じてしまう、というのはいい過ぎかもしれないが、5の車内には相当なゆとりがある。インテリアの質感も高い。

グラスエリアの大きいキャビンは開放的で、フロントガラスは大きく傾斜しているが、前方視界は優秀。このプロトタイプ水準の外界との隔離性が量産車へ落とし込まれるなら、新たなベンチマークになるかもしれない。

もっとも、内装は仕上げ途中で一部が省かれており、高速域では車外のノイズを大きく届かせていた。駆動用モーターのノイズも。

ダッシュボードの取り付け位置は、印象的に低い。スーパーカーに乗ったような印象を受ける。従来のポールスターと、一線を画すことは間違いないだろう。

最高出力886ps すべてが高次元で調和している

バッテリーEVの優等生、ポルシェ・タイカンに太刀打ちできるだろうか。助手席へ同乗しただけとはいえ、その可能性を強く感じた。

少なくとも886psの最高出力と、91.4kg-mの最大トルクを備える可能性を、ポールスターは認めている。電圧800Vの電動アーキテクチャを実装し、前後2基の駆動用モーターを搭載するという。

ポールスター5 プロトタイプ
ポールスター5 プロトタイプ

ポールスターのトーマス・インゲンラートCEOは、「会社を定義づけるプロジェクトです」。と述べ、今後の発表に向けて自信を伺わせる。

「先進的なデザインと高度な技術が、ポールスターの将来の方向性を指し示します。弊社には、象徴的なバッテリーEVを開発可能な、素晴らしい人材が揃っています」。と。

サスペンションだけでなく、同乗したプロトタイプのメカニズムはかなりシンプルだった。後輪操舵システムやアクティブ・アンチロールバーは装備されず、これは四輪駆動ではなく後輪駆動でもあった。だが、すべてが高次元で調和しているようだった。

若干オールドスクールなパッケージングともいえるが、その性格付けはまったく異なる。「わたしたちは、走りの面でもポルシェ・タイカンへ挑戦したいと考えています。痛快な走りが必ずしも悪いものではないと、証明したいのです」

バグリーが穏やかに話す。新しい期待の星として、想像は膨らむばかりだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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