アストン マーティン 初の電動SUV、2025年導入へ 米ルーシッドから部品供給

公開 : 2023.06.27 19:25

英国のアストン マーティンは、米国の新興企業ルーシッドと提携し、同社初のEVを2025年後半に導入します。ルーシッドのバッテリーとモーターを使用し、アストン独自のEV用プラットフォームに統合する予定です。

英アストンと米ルーシッドが提携

英国の自動車メーカーであるアストン マーティンは、同社初のEVとして、ルーシッドのモーターとバッテリー技術を搭載した新型SUVを2025年後半から導入する。

米国の新興企業であるルーシッドのコンポーネントは、アストン独自のモジュール式EV専用プラットフォームに搭載される。新型SUVを皮切りに、今後10年以内に新型のグランドツアラーにも使用される予定だ。

アストン マーティンが公開したEVの予告画像
アストン マーティンが公開したEVの予告画像    アストン マーティン

アストン マーティンのローレンス・ストロール会長は6月26日、今回の提携は2年半以上かけて行われたもので、競争的な入札プロセスを経て、ルーシッドがアストンのEV戦略にとって傑出したパートナーとして浮上したと述べた。

2億3200万ドル(1億8200万ポンド、約330億円)の契約構造では、ルーシッドがアストン マーティンの3.7%の株式を取得し、アストン マーティンはその株式保有を可能にするために7900万ポンドの新規割当を提供。残額は現在から2026年までの間に現金で分割払いされることになっており、さらにアストンから1億7700万ポンドが、長期供給契約と称されるコンポーネントの代金として支払われる。

パワートレインと電気アーキテクチャーに関するメルセデス・ベンツとの既存の供給契約は、ルーシッドとの契約によって影響を受けることはない。EVプラットフォームにはメルセデスの電気アーキテクチャーを使用することになる。

アストンとルーシッドには、サウジアラビアの公共投資ファンドという共通の投資家もいるが、ストロール会長は両社がこれとは無関係に話をしていると述べた。

ストロール会長は「わたし達のデューデリジェンスの結果、ルーシッドが最高レベルの馬力と最小のバッテリー高を持つ最高の既存技術を示しました」としている。

アストンは、1つのEVプラットフォームでどのセグメントにもモデルを投入できる体制を臨んでおり、ルーシッドのバッテリー技術を使用することで、通常は困難なスポーツカーを作ることができるようになる。

「アストン マーティンの目標は、最高性能のEVを製造することであり、わたし達は(ルーシッドと)同じような考え方を持っており、大きく一致していることがわかりました。ルーシッドとパートナーになれたことを誇りに思います」

最大4モーターの高性能EV開発か

ルーシッドは現在、エアというセダン1車種を生産している。搭載されるドライブユニットは、1つあたり74kg弱の重量ながら最大680psを発生するという。

アストンは、モーター、インバーター、トランスミッションを一体化したルーシッドの電気駆動ユニットを利用することになる。ルーシッドのCEOであるピーター・ローリンソン氏によると、このユニットの出力密度は1kgあたり9psで、テスラの2倍以上、ヒョンデの8倍にあたるという。同社はまた、1kgあたり17psのレース用モーターの開発にも取り組んでいる。

ルーシッド・エア
ルーシッド・エア

アストンのEVは最大4基のモーターを使用し、その合計出力は1500psに達する可能性がある。「アストンは4基のモーターを使いますが、当社は3基です。アストン マーティンは、次の段階に進もうとしています」とローリンソン氏は言う。4モーター技術では、アストン独自のツインモーター・フロントアクスルが採用されることになる。

ルーシッドはバッテリーセルとモジュールも供給し、アストンはそれらを独自設計のバッテリーパックに使用する。すべてのコンポーネントは米アリゾナ州にあるルーシッドの工場で製造され、英国に輸送される。

ローリンソン氏は、すべての技術はエアから派生したものだが、「ソフトウェアが大幅に変更されている」と述べている。「主な違いは熱統合とバッテリーレイアウトです。バッテリーパックの形状が異なり、ソフトウェアにも違いがあります」

アストンの技術責任者であるロベルト・フェデリ氏は、同社初の電動ドライブトレインを年内にテストベンチで稼働させ、2024年初頭には最初のプロトタイプを公道で走らせたいと考えている。

フェデリ氏は、このパワートレインが使用されるプラットフォームについて、「完全にフレキシブルなBEVプラットフォームで、高さとホイールベースがモジュール化されている」とし、2030年代まで使えるように設計されていると語った。

現行型のアストン マーティン・ヴァンテージの全高1273mmより、さらに20m低いスポーツカーを作ることができるという。これは、ルーシッド製バッテリーセルのコンパクトなサイズと設計によって可能になる。「最も重要なのは、最も低いことです」とフェデリ氏は言い、引き続き車高の低いスポーツカーを作り続ける姿勢を示した。

しかし、アストン初のEVはスポーツカーではなく、電動SUVになることが、提携のニュースとともに公開された予告画像で示されている。続いて電動グランドツアラーが2030年までに登場する可能性が高いが、スポーツカーモデルは今のところその兆しはない。

アストンのチーフブランド&コマーシャル・オフィサー、マルコ・マティアッチ氏は「現在から2030年にかけての(EV)市場の進化を見ると、グランドツアラーとSUVが成長すると思われます。わたし達はDBXでSUVの足がかりを築き、110年間グランドツアラー手がけてきました。まず、これらのセグメントに目を向けます」と述べている。

「その後、お客様と話し、お客様の要望を確認します。これはスポーツカーを作るかどうかにかかっています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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