ロールス・ロイス・スペクター上陸 超高級ブランドのEV化戦略とは

公開 : 2023.07.01 21:12

『世界初のウルトラ・ラグジュアリー・エレクトリック・スーパークーペ』を謳うロールス・ロイス・スペクターが日本で披露されました。ファントム・クーペの精神を受け継ぐ新開発の純電動モデルを会場からレポートします。

なぜ電動化するのか

ロールス・ロイス初の市販BEVとなるスペクターが、日本で披露された。「世界初のウルトラ・ラグジュアリー・エレクトリック・スーパークーペ」と謳うスペクターは、現代アートやヨットにインスパイアされた2ドア4座ファストバック・デザインを備える。

ロールス・ロイス社は、電気自動車への参入をリーダーシップの証しとして重要な責務と考えている。スペクターは2030年までに同社の全モデルが電動化される幕開けとなるモデルである。電動化を進める背景には、英国政府が温暖化対策の一環として、ガソリンとディーゼル・エンジンを搭載する車両の新車販売を2030年までに禁止すると発表したことがある。

ロールス・ロイス・スペクター
ロールス・ロイス・スペクター    上野和秀

あわせてヨーロッパ連合(EU)も、2035年以降に販売できる新車はBEVや燃料電池車のみにすると発表し、世界的に電動化の流れが加速していることも後押しする。これまでのICE(内燃機関)で対応することは不可能なことから、ロールス・ロイス社は積極的に超高級BEVの開発を進め、スペクターが送り出されたのである。

スペクターはこんなクルマ

スペクターはファントム・クーペの精神を受け継ぐ、新たに開発された電動専用モデルで、2ドア4シーターのファストバック・スタイルのBEVクーペとなる。モデル名のスペクターは妖怪、幽霊を意味するもので、ゴースト、ファントムからの流れを受け継いだロールス・ロイスらしい名だ。

ボディサイズは、全長5453mm、全幅2080mm、全高1559mm、ホイールベース3210mm。ファントム・クーペに較べ159mm短くされている。フロントの流気を良くするために設計されたイルミネーションを備えるパンテオン・グリルや、延べ830時間に及ぶデザイン・プロセスと風洞実験により、スペクターはロールス・ロイス史上最も低いCd値0.25を達成している。

ロールス・ロイス・スペクター
ロールス・ロイス・スペクター    上野和秀

電動モーターは前後に配され4輪を駆動する。前輪に190kW、後輪は260kWのパワーが与えられ、統合最高出力は430kW=584ps、最大トルクは91.77kg-mを発揮。0-100km/h加速4.5秒、最高速度250km/hと、ロールス・ロイスの名に恥じぬ俊敏なパフォーマンスを発揮する。バッテリー容量は120kWhで、航続距離は530kmと発表。充電は8.0kWまでの家庭用交流普通充電と、最大で195kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応する。

オール・アルミニウム製スペースフレーム「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」を採用。アルミ押出材を使い、バッテリーを車体構造に組み込み剛性を30%向上。走りの面で重要な役割を担うのはプラナー・サスペンションで、路面状況とドライバーの入力をモニターし、ロールス・ロイスを象徴する「魔法のじゅうたん」の乗り心地を実現する。

インテリアは、近年のロールス・ロイス特別仕様車に共通する「夜空」をイメージしたモチーフが特徴。オプションのスターライト・ドアパネルは、5876個のミニLEDライトで星を表現。助手席前のパネルには、停車中に5500個以上の星が車名を囲むように表示される。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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