サーキットでの精度と熱意 アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオへ試乗 100周年記念仕様

公開 : 2023.07.14 08:25  更新 : 2023.08.18 08:52

稀代のスポーツサルーン、ジュリア・クアドリフォリオが小変更。引き上げられた動的能力を、英国編集部が確かめました。

ミニGTAフィーリングを目指した小改良

称賛を集めるアルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオが登場したのは、2016年。伝統のブランドへ、クラス最高水準の性能を宿すモデルを求めてきたファンにとっては、待ち望んだ恵みの雨のような存在だろう。

後輪駆動のシャシーを適度にコンパクトなボディで包み、純粋で機敏な操縦性を実現。クアドリフォリオのフロントには、フェラーリ由来とされる2.9L V6ツインターボ・エンジンが搭載され、鮮烈なパワーでドライバーを魅了してきた。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)

そんなスポーツサルーンの登場から年月が過ぎ、アルファ・ロメオは小変更を実施した。シンプルに本来の特性を磨くことで、より優れたモデルへアップデートされている。

通常のジュリアも、2023年にフェイスリフトを受けている。ヘッドライトは精悍さを強め、中央の逆三角形とバンパー両サイドで構成されるトリロボ・グリルを獲得。モニター式メーターパネルが採用され、インフォテインメント・システムも一新された。

加えてクアドリフォリオの場合、V6ツインターボが再チューニングされ、最高出力は521psへ上昇。サスペンションやドライブトレインにも改良が施された。同社の技術者を率いるドメニコ・バグニャスコ氏は、「ミニGTAフィーリング」を目指したという。

四つ葉のクローバーのロゴ、クアドリフォリオが誕生してから100周年を祝う特別仕様、「100アニバーサリオ」も用意された。世界100台の限定で、例のロゴはゴールドで縁取られている。英国への割り当て分は、完売したらしい。

機械式LSDを採用 強みはそのまま

シャシーへ受けた改良を見ていくと、内容は広範囲に及ぶ。従来のダンパーの減衰力特性と、トルクベクタリング機能付きのリミテッドスリップ・デフ「eデフ」の働きが起因する、サーキットでの不安定感が改善されている。

結果として、高負荷時にはオーバーヒート状態になることもあった、電子制御のeデフは任務終了。新たに、加速時は最大35%、減速時は最大50%のロック率が与えられた、機械式リミテッドスリップ・デフが採用された。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ 100アニバーサリオ(欧州仕様)

「挙動をより予想しやすく、反応が素早く、従来的な操縦フィーリングを求めました。そこで前後のアンチロールバーを強化し、電子制御タンパーも高負荷時の特性を中心にチューニングを施しています」。と、バグニャスコが説明する。

「操舵に対しどれだけリアが追従するかという、リアアクスルのフィーリングも改めています。ESC(スタビリティ・コントロール)がオフの状態での限界領域での操縦性も、安定志向に振りました」

もちろん、座面が低いドライビングポジションは従来どおり。バケットシートはしっかり身体を保持してくれる。操縦系のレイアウトは適切で、車載機能のインターフェイスは一目瞭然。適度に引き締まったサイズ感など、ストロングポイントは変わらない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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