EV専用タイヤが必要な理由 エンジン車との違いは? メーカー各社の最新技術

公開 : 2023.07.04 06:05  更新 : 2023.07.04 15:45

EV(電気自動車)の販売が増える中で注目されているのが、EV用のタイヤです。EVの特性上、トルクや重量、ロードノイズなど従来品とは異なる性能が求められ、メーカー各社は研究開発に力を入れています。

EV用タイヤを選ぶ4つの理由

EV用のタイヤは以前と大きく違うのだろうか? それとも、どんなタイヤでもいいのだろうか?

グリップ、ハンドリング、制動距離、快適性、騒音、経済性、ウェット路面での性能、摩耗率などの点で、プレミアムタイヤは無名ブランドの激安タイヤよりも優れている。にもかかわらず、多くのドライバーはただ安い品を望むだろう。

コンチネンタルの「コンチ・サイレント」と呼ばれる層はロードノイズを9dBAカットするという。
コンチネンタルの「コンチ・サイレント」と呼ばれる層はロードノイズを9dBAカットするという。    コンチネンタル

しかし、専用設計されていないタイヤをEVに装着すると、思わぬ損をしかねない。では、なぜEV用タイヤの設計は、エンジン車用タイヤとは異なるのだろうか? それには4つの理由がある。

まず、EVはバッテリーの重量が重い。例えば、エントリーグレードのフォルクスワーゲンID.3は、従来のフォルクスワーゲン・ゴルフと比べて30%近く重い。

次にトルクだ。電気駆動モーターでは、高いトルクが瞬時に路面に伝わる。ごく普通のEVであっても、トルクは強烈なものであり、摩耗の増加につながる可能性がある。

騒音も大きな要因だ。EVのドライブトレインは、加速時や高速道路での巡航時でも非常に静かなので、ロードノイズや風切り音はより顕著になる。

最後に、経済性と転がり抵抗だ。転がり抵抗がEVだけでなくエンジン車にも影響するのは事実だが、300kmのドライブで転がり抵抗が10%増加した場合、エンジン車よりもEVの方がその差が目立つだろう。

各タイヤメーカーは、カーカス(構造体)の耐荷重性を高め、特にサイドウォールの構造を強化し、より強靭なゴム素材を使用することで、追加重量に対処してきた。

2021年、コンチネンタルは、ロードインデックス(負荷能力)825kgの「HL(High Loadの略)」という規格のタイヤを初めて製造したと発表した。同サイズのSL規格より大きな荷重に対応するものだ。

また、同社はエコタイヤのエコ・コンタクト6向けにグリーン・チリ2.0と呼ばれる新しいコンパウンドを開発し、変形時(転がり時)のエネルギー消費を従来のものより15%削減したという。

トレッドのデザイン、路面への分布、内部ベルトのデザイン、さらにはホイールリムをグリップするビードもすべて転がり抵抗に影響するため、エンジニアは重くてトルクのあるEV用タイヤを開発する際にこうした要素を考慮しなければならない。

ロードノイズを最小限に抑えるため、トレッドブロックの幅はランダムに変化しているが、その設計は現在さらに精査されている。トレッド内側の発泡層は、振動によるノイズを吸収するのにも役立つ。コンチネンタルはポリウレタンフォーム層をコンチ・サイレントと呼んでおり、ロードノイズを9dBAカットするとしている。

また、ミシュランはミシュラン・アコースティックと呼ばれるものを、ハンコックはタイヤの溝の底にローレット加工を入れるという斬新なアイデアを打ち出している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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