マニア心を刺激する魅力 アルファ・ロメオ2000 スプリント ブリストル406 不遇のクーペ 前編

公開 : 2023.07.16 07:05

世界で最も美しい量産車として名を刻む

1958年に発売されたブリストル406の英国価格は、4244ポンド。恐らく当時は、世界で最も高価な2.0Lエンジンの量産車だったと考えられる。それでいて最高速度は時速100マイル、161km/hと、際立つものではなかった。

ボディはアルミニウム製だが、セパレートシャシー構造。航空機製造で培った品質をベースに手作業で作られ、4名が長時間過ごせる車内を有していたが、満足のいく支持は得られなかった。

ブルー・シルバーのブリストル406と、シルバーのアルファ・ロメオ2000 スプリント
ブルー・シルバーのブリストル406と、シルバーのアルファ・ロメオ2000 スプリント

ボンネットを開かずに、V8エンジンを積んだ407と見分けられる特徴はルーフ部分。406には備わる、タクシーのようなウインカーが省かれている。それ以外は同じといっていい。

アルファ・ロメオも、2000 スプリントと2600 スプリントを区別するポイントは、後者のボンネットにエアインテークがあることのみ。ここを隠したら、マニアでも判断することは難しいだろう。

しかし、製造数は大きく異なる。2000 スプリントは約2年間に705台しか作られていないが、2600 スプリントは1967年までに7000台近くがラインオフしている。

2023年にこの2台を並べてみると、発表が2年しか違わないという事実に驚かされる。細身のピラーが支える滑らかなルーフと、スタイリッシュな4灯ヘッドライトを備えるフロントマスクは、1960年代初頭としては印象的にモダンだったはず。

世界で最も美しい量産車として、2000と2600 スプリントは歴史に名を刻んでいる。クーペというデザインの、新時代が表現されていた。

独特のクラシカルな威厳を漂わせる406

その2年前に誕生した406は、ブリストル・カーズのスタイリングの特徴を最も美しくカタチにしている。大柄なボディは、2000 スプリントより400mmも長い。車重も僅かに重く、雰囲気としては2ドアサルーンと表現しても良いだろう。

リアシート側の空間は広く、上下方向にもゆとりがある。肉厚なタイヤが巻かれたホイールも、16インチと大きい。

ブリストル406(1958〜1961年/英国仕様)
ブリストル406(1958〜1961年/英国仕様)

独特のクラシカルな威厳を漂わせる406は、優秀なダンロップ社製のディスクブレーキを前後に備え、現代的なラック&ピニオン式ステアリングラックが組まれる。2000 スプリント以上の技術を得ていた。

リア・サスペンションはトーションバー式ながら、ワッツリンクを採用。洗練性を高めつつ、ロールセンターの位置を下げていた。

フロントサスペンションは、戦前のBMWのスタイルに則った、横置きリーフスプリング。その後、重たいV8エンジンを積んだ407では、コイルスプリングへアップデートされている。

2000 スプリントは前後ともコイルスプリングが支え、フロントにはダブルウイッシュボーン式を採用している。リアは、ラジアスアームが支持するリジッドアクスル。ただし不思議なことに、アンチロールバーは備わらない。

フロントヒンジのボンネットを開くと、ダブル・オーバーヘッド・カムの直列4気筒エンジンが姿を表す。ショートストロークでアルミ・ブロックの、ジュリエッタ用ユニットより見た目は少々古い。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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