マニア心を刺激する魅力 アルファ・ロメオ2000 スプリント ブリストル406 不遇のクーペ 後編

公開 : 2023.07.16 07:06

1960年代に登場した、2台の高級4シータークーペ。生産1000台にも満たない希少モデルの魅力を、英国編集部が比較します。

ラグジュアリーな406のインテリア

シャープなスタイリングのアルファ・ロメオ2000 スプリントは、ウエストラインが低く開放的。インテリアの品質はブリストル406と同様に高く、華やかさがある。ドアは長く、フロントシートが前方に倒れ、どちらもリアシートへのアクセス性に優れる。

車内空間は若干タイトで、膝周りにも肘周りにも余裕はない。グランドツアラーを想定していながら、荷室も広いとはいえない。

ブルー・シルバーのブリストル406と、シルバーのアルファ・ロメオ2000 スプリント
ブルー・シルバーのブリストル406と、シルバーのアルファ・ロメオ2000 スプリント

パワーウインドウとチョーク、ヘッドライト、ヒーターファンなどの操作系が、整然と配置されている。人間工学への意識が充分ではなかった時代だが、ステアリングコラムにはレバーも備わる。ワイパーは動作が一定ではなく、運転の集中を奪う。

406の直列6気筒エンジンは、吸気バルブのプッシュロッドとロッカーが隠れているため、ツインカム・ユニットにも見える。効率を求めて横方向に動くプッシュロッドが、エグゾースト・バルブを開閉させる。

ドアを開くと、リクライニング式のフロントシートにはヘッドレストが内蔵されている。ロイター社製で、かなり先進的な装備といえた。

ダッシュボードの計器類は見やすく、ステアリングホイールのスポークは操縦桿のようにカーブを描く。上質なレザーとウッドパネルがふんだんに用いられ、2000 スプリントより明らかにラグジュアリーだ。

長いボディサイズを活かし、フロントフェンダー部分にスペアタイヤが内蔵されている。荷室には余裕がある

アルファの4気筒が僅差で勝る滑らかさ

2台を発進させると、僅かに軽くパワフルな2000 スプリントの方が活発。この印象は、ギア比も貢献しているはず。5速で1000rpm当たり30.2km/hなのに対し、406は4速のオーバードライブで38.9km/hとロングだからだ。

どちらのエンジンも5000rpmまで軽快に吹け上がるが、滑らかさではブリストルの6気筒より、アルファ・ロメオの4気筒の方が僅差で勝る。5速MTを操れば、ツイン・ウェーバー・キャブレターが生む限られたパワーを活用できる。

アルファ・ロメオ2000 スプリント(1960〜1962年/欧州仕様)
アルファ・ロメオ2000 スプリント(1960〜1962年/欧州仕様)

2000 スプリントのシフトレバーは長めながら、滑らかで正確に動く。低回転域でのトルクが太く、64km/h以上出ていれば5速で対応できる。ブレーキペダルはストロークが長く、感触がやや曖昧に思えた。

ステアリングホイールは、406と同様に低速域で重いものの、ロックトゥロックは3回転とレシオは高め。スピードが乗ってくると軽快でダイレクトな反応に変わり、直進性も悪くない。

ブルー・シルバーの406へ乗り換える。ハードな質感のバルブノイズと吸気ノイズが重なり、加速時には素晴らしい音響体験を与えてくれる。低速域での柔軟性や扱いやすさは、2000 スプリントと遜色ない。

富裕層が乗る4シーター・グランドツアラーだが、主要な操作系が入念に煮詰められ、操る喜びに浸れる。ボールジョイントで結ばれるスロットルリンケージは繊細に動き、回転数を意のままに変化させられる。ただし、クラッチペダルはかなり重い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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