ゼノスE10
公開 : 2014.10.08 23:50 更新 : 2017.05.29 20:01
今のところテストできるのはE10とE10Sの二種類。
2台は、アルミニウムとカーボンファイバー強化プラスティックによるハイブリッド構造の共通のシャシーを採用。ダブルウィッシュボーン式となるサスペンションはシャシーの四隅にボルトで結合される。ブレーキ、ステアリング、エンジン、ギアボックス、ECUなどできる限りフォード製の、これまた ’手の届く価格の’ パーツがたくさん流用されている。
真ん中のタブはBMW i3やi8と同じ素材のものを使用。”英国産というのは重要なことなのです。またカーボンファイバーの70%もの強度と軽さを達成していながら10分の1の価格に抑えられているのも重要な要素です” とアリ氏は語ってくれた。
メーカー名のゼノスは英語表記でZenosとなるのだが、ZenとOsというワードの複合語なのだそう。Zenは心と体を一つにすることに焦点を合わせた教化から、Osは大まかに骨格と訳せる。Zenにはもうひとつ、先入観や偏見によって構築された、歪められた見識を抜きにして、まっすぐとものごとを見つめるという意味も含まれる。E10の場合、’見たままがすべて’ という言葉を見事に体現していると言える。
エンジンは203psの2ℓのフォード製。シートは2座、組み合わされるギアボックスは5速のマニュアル。全てをひっくるめて車重はちょうど690kg、0-100km/hタイムは4.5秒で最高速度は217km/hに達する。
E10Sの車両価格は£29,995(522万円)まで上昇するが、エンジンはエコブースト・ターボに変わり、E10よりも更に51psアップ、0-100km/hタイムは4.0秒まで短縮される。また最終的にはE11ロードスターと、そのクーペモデルであるE12も追加される予定で、両方ともE10よりの設定となるそうだが、E10よりも少しだけ動力性能が向上するとのこと。
アリ氏のブランド哲学にカスタマーを夢中にさせることにより、数年間E10で楽しんでもらったのちに、さらに高級なモデルを買ってもらおうというわけだ。
英国の小さなスポーツカー・メーカーは、いささか運に身を任せたかのような企業哲学を提示することが多い中、とてもよく考えられていると感じた。
そして製品化前のE10を乗ってみたところ、この哲学が非常に上手く反映されているとも思える。今回私はターボ加給なしのモデルを、ブランズ・ハッチ・サーキットで数周走らせたあとに、有名なケント・サーキット周辺の一般道を長い時間走らせたのだが、あまりのデキの良さにとてつもなくたまげた。
まだ初期のプロトタイプにもかかわらず、既に構造的な完成度が高いし、乗り心地も驚くほど素晴らしい。大きなスタビライザーや硬いスプリングを不採用にするまえのロータス・エリーゼにやや似ている。
パワー・アシストを持たないステアリングもとてつもなく正確。操舵は潔く、きびきびとしていた。ややサーキットにはソフト過ぎるのかもしれないが、私には良い兆しのように思えた。というのも、サーキットだけではなく、一般道路の走行も視野に入れて作られているからである。
そのうえもう少し硬いサスペンションが欲しければ、交換も可能だ。フレキシビリティこそ、ゼノスの中心的な気質なのだから。
初期段階にしてはフォード製のエンジンは驚くほどマナーが良く、力強い印象を与えてくれた。感触の良い5速ギアボックスのを介して、たっぷりと動力は伝わってくる。690kgのクルマを運転するとこんな感じなんだろうな、という期待に見事に応えてくれた。
ブレーキは、今装着されるものより大径のものを使うと更に良くなるはずだ。