伯爵が愛したトポリーノ フィアット500 ブルー/ブラックのレーシングカラー 後編
公開 : 2023.07.22 07:06
レーシングドライバーでもあった伯爵が愛した、小さなトポリーノ。見事な復活を遂げた500を、英国編集部がご紹介します。
もくじ
ーオリジナル状態を保っていたトポリーノ
ーナンバープレートが不自然に大きく見える
ードライバーの努力が走りとして返ってくる
ー伯爵の3台で唯一生き残ったトポリーノ
ーフィアット500 C トポリーノ(1936〜1954年/英国仕様)のスペック
オリジナル状態を保っていたトポリーノ
英国のクラシックカー・オーナーを支える、ビスター・ヘリテージ社の創設者でCEOを務めるダン・ジオゲガン氏が、ブルーとブラックのフィアット500 C トポリーノを発見したのは2016年。RYF 858のナンバーをぶら下げていた。
「状態の悪くないマイナー・トラベラーがあると聞いて、ウィートリーという町を訪ねた時でした。そのオーナーは、ほかにもう1台、保管してあると切り出したんです」。とダンが振り返る。
第5代ハウ伯爵のツートーンカラーが残っていた小さなフィアットは、乾燥されたガレージに眠っていた。数10年放置されていたが、ライトグリーンのシートやナンバープレートに至るまで、完全なオリジナル状態を保っていたという。
「飛び石傷や塗装の風合いも含めて、できるだけ本来の状態を保とうと思いました」。とダンが振り返る。
それでもソフトトップは傷み、バンパーも錆びていた。「サンルーフは交換し、バンパーはクロームメッキし直しています。エンジンのリビルドには多くの時間を割きました。機械的に手を加える必要がありました」
現在のエンジンルームは、見事な状態を取り戻している。当時と同じレッドにブラックの模様が入った点火コードや、カクテルシェーカーのようなブレーキのリザーバータンクが、落ち着いた色彩のなかで主張する。
ラジエターが高い位置にあり、約20L入る燃料タンクの両脇を通って、温かい空気が車内へ導かれる。ガソリン補給には、ボンネットを開く必要がある。
ナンバープレートが不自然に大きく見える
全長は短いものの、ボディのプロポーションは均整が取れている。車内にはバックミラーと室内灯、サンバイザー、遠隔で動かせる換気用のフラップなど、当時の小型車の水準を超えた装備が整っている。
ソフトトップには、充分な大きさのリアウインドウも備わる。共通規格のナンバープレートが、不自然に大きく見える。
このトポリーノは、1949年に登場した後期型の500 C。最高出力は16.5psへ上昇しており、恐らく最高速度は現実的に95km/h程度出るだろう。角ばったフロントノーズのデザインと、テールライト、バンパーのオーバーライダー、ウインカーなどがCの特徴だ。
シャシー側では、1948年から1949年という短期間に提供された、中期の500 Bと多くを共有している。オーバーヘッド・バルブのエンジンや、リーフスプリングのサスペンションなど。重力式ではなく、機械式の燃料ポンプはCだけの装備となる。
リアヒンジのドアは、大きく開き乗り降りしやすい。横方向の空間を広げるべく、内装パネルが凹型にくびれている。
オリジナル状態のバケットシートは、見た目以上に座り心地が良い。足元の空間は限定的で、クラッチやブレーキのペダルを踏もうとすると、慣れるまでは足がステアリングコラムとぶつかりがちだ。
キーを挿しイグニッションをオンにし、スターター・ノブを約10cm引くと、569ccエンジンが目を覚ます。一連の手順が好ましい。