デジタル技術好きなら共感できる? ハイファイ Zへ試乗 走りの差別化が欲しい

公開 : 2023.08.08 08:25

デジタル技術が前面に押し出された車内

ドアは電動で開閉し、ドライバーが接近すると自動的に開くよう設定が可能。通常はピラーに配されたボタンを押すのだが、隣のクルマなどとの接触を防ぐセンサーが身体を検知し動きが止まるため、押した後はすぐに一歩下がる必要がある。

車内は、ヒューマンホライゾン社の強みを活かし、デジタル技術が前面に押し出されている。ボディのフォルムから想像するよりドライビングポジションは高めで、頭上の空間は限定的。高級車という基準では、狭いといっても差し支えないだろう。

ハイファイ Z(欧州仕様)
ハイファイ Z(欧州仕様)

リアシート側は、フロアが高めながら、大人がゆったり座れる広さがある。内装素材の質感は低くなく、テスラより高級感がある。雰囲気は悪くない。

インテリアで存在感を示すのは、15.0インチの大きなタッチモニター。ハイファイ・ボットと呼ばれる、インフォテインメント・システムが稼働する。

このモニターは可動式のアームで支持されており、ドライバーがモニターへ目線を送ると、センサーが感知して斜めに向きを変えてくれる。システム自体は応答性に優れ、グラフィックも高精細で、操作性は良いと感じた。

正直なところ、モニターの向きが変わらなくても、使いにくいことはないと思う。最新のデジタル家電を好むような人からは、共感を得られるはず。

息を呑むほど速く洗練されている

確認が長くなったが、実際に路上へ出てみよう。かくして、Zは息を呑むほど速く、洗練されている。まだ創業から10年も経っていないことを、まったく感じさせない。

航続距離も、ハイファイの主張どおりに長い。満充電状態だった試乗車は、スタート時点でメーター用モニターに560km走れると表示されていた。

ハイファイ Z(欧州仕様)
ハイファイ Z(欧州仕様)

アダプティブダンパーと後輪操舵システムを備え、市街地でも高速道路でも乗り心地に優れ、扱いやすかった。同時に、今回の試乗ルートではシャシーの能力を探ることはできなかったものの、機敏に身をこなすような印象までは得られなかった。

ハイファイ側も、このクラスの上位に位置するモデルへ並ぶような、操縦性を備えていないことを認めている。そもそも目標にはしなかった、と。だが、もう少しダイナミックさを与えても良かったのではないだろうか。

車載技術や個性的な見た目以外にも、クルマとして際立たせる特長があっていいだろう。確かに上質なドライビング体験は得られているが、薄味ともいえる。新興ブランドとして、動的な差別化が充分ではないように感じた。

Zの完成度は低くない。現代のバッテリーEVとして、評価すべき到達度にはある。デジタル技術を好むなら、筆者以上に強い共感を得られるのかもしれない。

ハイファイ Z(欧州仕様)のスペック

英国価格:10万ポンド(約1750万円/予想)
全長:5036mm
全幅:2018mm
全高:1439mm
最高速度:199km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.9秒
航続距離:555km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2539kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:120kWh(実容量)
急速充電能力:−kW
最高出力:672ps
最大トルク:83.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード/四輪駆動

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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