フェラーリ・ローマへ大接近 アストン マーティンDB12に試乗 4.0L V8は680psへ 後編

公開 : 2023.07.07 08:26

伝統のグランドツアラー、DBシリーズが12へ一新。11から大幅にアップデートされた実力を、英編集部が評価しました。

次のカーブを貪欲に追い求めたくなる

今回の試乗では、フランス南部、マルセイユへ続くナポレオン街道と、ニースへ続くヴァンス峠を走らせていただいた。ナポレオン街道は勾配がきつく、ヘアピンカーブや2速で抜けるような低速コーナーが多い。ヴァンス峠は、3速の高速コーナーが続く道だ。

かくして、アストン マーティンDB12は抜群の敏捷性を披露。タイヤのグリップ力は極めて高く、安定し流れるように滑らかな操縦性で、存分にワインディングを楽しませてもらった。

アストン マーティンDB12(欧州仕様)
アストン マーティンDB12(欧州仕様)

アストン マーティンのローレンス・ストロール会長と、以前にお話をする機会があったのだが、彼はあえて先代のDB11を遅いと表現していた。同社の技術者たちは、その発言へ応えたのだろう。DB11に勝るDBSより、DB12は断然速い。

4.0L V8ツインターボエンジンは、速度域を問わず間髪入れずにパワーを繰り出す。8速ATも、見事に調和している。とはいえ印象としては、スーパーツアラーという言葉からイメージするものより、グランドツアラー的ではある。

トルクコンバーター式だから、デュアルクラッチのようにキレキレの容赦ない変速をするわけではない。V8エンジンのサウンドも、かつてのV12エンジンのように鼓膜を打ち破ろうかという壮大な音響ではない。不足はない聴き応えではあるが。

ボディの剛性感は、DB11から7%向上したという数字以上に強固。高速コーナーでは、アグレッシブなスポーツカーのように活き活きと走る。まさに没入的で、次のカーブを貪欲に追い求めたくなるほど。

現実的な条件での快適性に感心

一方で、速度域が低いチャレンジングな道では、小さくないボディサイズが少々気を揉ませる。また電子制御のeデフと8速ATも、ヘアピンでスリリングな走りへ興じるには、若干特性が甘いかもしれない。

実際の敏捷性という点では、一層スポーティなアストン マーティン・ヴァンテージとの間に、明確な開きはあるようだ。あちらは、ひと回りコンパクトではあるけれど。

アストン マーティンDB12(欧州仕様)
アストン マーティンDB12(欧州仕様)

引き上げられた速さ以上にDB12で感心したのは、市街地など現実的な条件での快適性。アストン マーティンが新たに採用したダンパーは、能力の幅が相当に広い。特に低速域での洗練性は秀抜といえ、680psもあるクーペだということを忘れさせるほど。

乗り心地は終始しなやかで、我慢を強いることは皆無に近い。今回は高速道路を延々と走る機会はなかったものの、長距離クルージングを疲れ知らずでこなせそうだ。

加えて、インテリアの知覚品質も大幅に前進している。内装の素材は上質なものばかりで、居心地が良く、DB11とは隔世の差があるといっていい。

タッチモニターを獲得したアストン マーティンではあるが、操作性やレイアウトにはまだ向上する余地がある。エアコンなどに、実際に押せるハードボタンが残された点は高く評価できる。だが、最新モデルに相応しいデザインとまではいえないかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ・ローマへ大接近 アストン マーティンDB12に試乗 4.0L V8は680psへの前後関係

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