完璧な無音と無振動 ロールス・ロイス・スペクターへ試乗 卓越のドライバーズクーペ 前編

公開 : 2023.07.11 08:25

新しく、伝統的な雰囲気も漂わせる車内

ボディサイドへ回ると、近年のロールス・ロイスでは最長となる、約1.5mあるリアヒンジのドアへ驚く。それを開くと、4名がけの豪華な車内が広がる。シートは上質なレザーで包まれ、このブランドの既存ユーザーなら、すぐに馴染める空間なはず。

同社のCEOを務める、トルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏は、目をつぶってスペクターへ乗っても、ロールス・ロイスだと理解して欲しいと考えている。もちろん、運転時は目を開く必要があるが。

ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)
ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)

フロアには毛足の長いカーペットが敷かれ、ドアやダッシュボードのスイッチ類は、見た目通り本物の金属か複合素材。お行儀が悪いかもしれないが、実際に爪で軽く叩いてみると、プラスティック製ではないとわかる。

新しいデザインでありながら、伝統的な雰囲気も漂わせる。先日、1964年式のロールス・ロイス・シルバークラウドIIIへ試乗する機会があったが、車内の印象には通じるものがある。ドライブトレインは、まったくの別物だとしても。

BMW譲りのインフォテインメント・システム

ダッシュボードに組み込まれたタッチモニターは、親会社となるBMW譲りのインフォテインメント・システムで稼働する。iドライブと同様に、モニターだけでなくロータリー・コントローラーを介しても操作でき、全般的に扱いやすい。

グラフィックは、ロールス・ロイス独自のもの。エアコンには、実際に押せるハードボタンが残された。BMW i7やiXとは異なるアプローチで、新鮮さすらある。必要なら、デジタル技術から距離を置くことも可能だ。

ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)
ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)

繁華街に建つ豪華なマンションは、広告の光や町の騒音などから完全には逃れられない。だが自然公園の奥に佇む邸宅なら、喧騒から完全に隔離される。

これと同等の体験を本当に叶えられる高級車は、ロールス・ロイスかベントレー程度。新しいスペクターも、その1台になる。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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