やっぱりMTは最高 BMW M2 ホンダ・シビック・タイプR マツダ・ロードスター スポーツカーの大切なパートナー 前編
公開 : 2023.07.15 09:45
英国のMモデルでは唯一のMTとなる、M2。2台の和製モデルとともに、マニュアル・スポーツの魅力を英編集部が再確認しました。
運転の楽しさと直結しているMT
BMWは、新しいG87型のM2クーペを発売した。英国では唯一、マニュアル・トランスミッション(MT)を選択できるMモデルで、AUTOCARではこの登場を喜んでいる。
そこで、英国で購入できる比較的手頃なMTの傑作スポーツカーとともに、比較試乗の機会を設けた。用意したのは、2023年のモデルイヤー・アップデートを受けたマツダMX-5(ロードスター)と、先代のホンダ・シビック・タイプRだ。
価格帯を越えて、最も好ましいシフトフィールを備えるモデルはどれだろう。ドライバー自らギアを選ぶ充足感が、1番豊かなモデルはどれだろう。現在では稀有な存在の3台を乗り比べて、ささやかな疑問に迫ってみたい。
さて、マニュアルというトランスミッションは、運転の楽しさと直結している。シフトレバーとクラッチペダルを動かした時の質感や、機械的な手応え、次のギアを選んだことで生じる推進力などの体感。すべてがダイレクトに結びついている。
完成度の高いMTは、サッカーチームでプレーの重要な役割を果たすミッドフィールダーのようなもの。全体を1つにまとめ、調和させ、可能性を最大限に引き出してくれる。
今回の3台は、それぞれ特徴が異なる。独自のスタイルで、豊かなドライビング体験を与えてくれる。
それでも、焦点を当てるのはMTを中心とした印象。トランスミッションがシャシーの強みとドライバーをどのように結び、どのような体験を生み出すのか。それ単体だけではなく、クルマ全体との関係性も重要になる。
スポーツカーにとって大切なパートナー
バッテリーEVへの転換が進む2023年にあっても、MTが非常に魅力的なコンポーネントであることは、AUTOCARの読者には説明不要だろう。内燃エンジンのスポーツカーにとっては、大切なパートナーになってきた。
その事実を、今回の3メーカーだけでなく、ポルシェやフォード、トヨタ、ヒョンデも、まだ認識している。数は減りつつあるが、うれしい事実だと思う。
クルマを購入する際、MTかATの選択に迫られると、多くのユーザーは後者を選ぶ。一般的に変速は滑らかで、安楽で、最近はカタログ上の燃費でも有利なことが多い。
高性能モデルに積まれたデュアルクラッチATは、サーキットのラップタイムを短縮してくれる場合もある。電子制御される四輪駆動システムや、トルクベクタリング機能との連携も取りやすい。
それでも、ドライバーズカーは運転を楽しむべきもの。クルマとの一体感を求め、エンジンのパワーがタイヤへ伝達されるまでを正確に操るのに、MTほど理想的なドライブトレインはないだろう。
プロペラシャフトとつながるギアをどれにするか、いつ次のギアを選ぶか、エンジンの回転数と走行速度をどう一致させるのか。左足でクラッチを繋ぐことも含めて、すべてを操ることにこそ本当の面白さがある。
BMW M2は、まさにそれを叶えている。変速するギアに適した回転数へエンジンを自動的に調整する、レブマッチング機能は付いているが、必要なければオフにもできる。両手両足が慣れれば、優れた動的性能を直接的に引き出せる。