やっぱりMTは最高 BMW M2 ホンダ・シビック・タイプR マツダ・ロードスター スポーツカーの大切なパートナー 後編
公開 : 2023.07.15 09:46
大きくオフセットしたM2のペダル
次は3枚のペダル・レイアウト。これも、ドライビング体験では重要な要素の1つになる。実のところ、今回の3台はベストといえる配置ではない。
ロードスターは足元の空間が狭く、若干オフセットしている。コンパクトなパッケージングが故に、避けられないことではあるだろう。それでも、不満なく扱える。
クラッチペダルの位置は少々高め。オルガン式のアクセルと、吊り下げられたブレーキとの関係はしっかり調整されており、ヒール&トウでのシフトダウンがしやすい。
シビック・タイプRは、ドライバーの正面に3枚のペダルが並んでいる。しかし、ブレーキとアクセルの間隔が離れすぎており、右足を倒しても望んだ通りにブリッピングできない。レブマッチング機能に頼りがちになる。
M2は、この3台では1番並びが良くない。MTを強くは想定しなかったであろうプラットフォームをベースに構築され、足元へ苦労しながら3枚のペダルとフットレストを配置したような雰囲気がある。
大きく右側へオフセットし、クラッチペダルがドライバーの中心線上にある。ブレーキペダルは、本来ならアクセルが位置して欲しい場所に来ている。M2で8速ATを選ぼうと考えたくなる理由になり得る。
ただし、実際に運転へ没頭し始めると、さほど気にならなかったことも事実。筆者の期待には及ばなかった程度だ。
今後の展開を想像する力が求められる
やはり、MTがドライビング体験を豊かにする要素であることは明らか。特にシビック・タイプRのクラッチとシフトレバーは、クルマとの一体感を強めてくれる。名脇役として、主役の4気筒エンジンを引き立てている。
BMW M2はシフトレバーが重く弾性があり、ストロークは長いものの、結果として大きな充足感を生んでいる。クラッチペダルの重さも、高性能なMモデルだという個性を表現している。力を込めて素早く丁寧に扱うことで、期待以上の喜びに興じれる。
それでも、1番の記憶を残したのはロードスターの6速MTだった。183psしか発揮しないエンジンから、素晴らしい楽しさを引き出せる。シンプルな後輪駆動のシャシーはシリアスすぎず、程々のグリップ力で運転へ惹き込む。
エンジンの回転数と、6段あるギアのベストを、ドライバーが選ぶ。シャシーのバランスを感じ取りながらコーナーへ侵入し、出口が近づいたらリアアクスルへパワーを伝える。頭と身体で、クルマの挙動を予想し操る。進行方向の道を読み取りながら。
理想的なMTのスポーツカーの運転には、今後の展開を想像する力が求められる。今回の3台で、その努力を最も投じる価値があるのは、マツダ・ロードスターといえそうだ。