VW中国部門トップ「EV市場は過熱状態」 エンジン車の開発継続を支持
公開 : 2023.07.07 19:05
フォルクスワーゲン・グループの中国事業トップは講演で、中国のEV市場が「過熱」していると指摘。激しい値引き競争により、最終的には消費者の損につながると述べ、今後もエンジン車に注力する姿勢を示しました。
激しい値引き競争、高価な設備投資に懸念
フォルクスワーゲン・グループの中国事業の最高経営責任者(CEO)であるラルフ・ブランドシュテッター氏は、EV市場の最近の動向について警戒感を示し、高額な設備投資と過度な値引き交渉は「最終的に消費者の利益を損なう」と示唆した。
ブランドシュテッター氏は、上海で開催された中国汽車工業協会(CAAM)主催の中国自動車フォーラム2023での講演で、EV市場は「過熱」していると述べた。
「現在、(EV)市場には120以上の自動車メーカーが存在し、2023年には約150の新モデルが発売される見込みです。激しい市場競争とバッテリー価格の高騰により、各メーカーは厳しい経済的圧力に直面しています。短期的な販売成功のためには、非常に高い設備投資が必要です」
ブランドシュテッター氏はEV新興企業の多くが直面している資金難についても触れ、近年参入した企業の多くが市場から撤退している、もしくは撤退間近であり、新たな資本投入が急務であるとした。
「わたし達は、過熱した市場状況に直面しています。競争の激化が本格化しています」
現在54歳のドイツ人で、フォルクスワーゲンブランドの元代表でもあるブランドシュテッター氏は、中国におけるEVの値引きについて特に批判的だった。
「熾烈な競争により、ここ数か月で大幅な値引きが行われています。これは最終的に消費者の利益を損なうことになります。撤退したブランドからサービスが受けられなくなったり、購入したモデルの価値が大幅に下がったりするのです」
こうしたコメントは、ライバルのテスラに対する批判を含んでいると見られる。テスラは中国での値下げを続け、値引きの流れをリードしている。
ブランドシュテッター氏は、フォルクスワーゲン・グループは中国のEV市場での販売と成長を全力で追求するつもりはないと語った。
「当社にとって、事業の収益性が最も重要です。短期的な成長を達成するために不健全な市場競争を行うつもりはありません」
2022年の世界のEV販売台数は、前年比55%増の1010万台となった。そのうち中国が590万台で最大のシェアを占めている。
中国市場におけるフォルクスワーゲン・グループの計画について、ブランドシュテッター氏は、販売台数が減少傾向にあるにもかかわらず、エンジン車を放棄するつもりはないとした。
「当社はエンジン車市場における優位性を今後も活用していきます。全体の規模は縮小していますが、独自の規模とコストでの優位性により、かなりの収益性を維持しています。2030年までに、合計17車種の新型エンジンモデルを発売します」
「さらに、ハイブリッド技術の開発を推進し、ガソリン車を徐々にプラグインハイブリッド(PHEV)に転換し、この市場セグメントにおける強力なプレーヤーになることを目指します」
また、競争力を高め、収益性を向上させる取り組みの一環として、ブランドシュテッター氏は「フォルクスワーゲンはチャイナスピードで加速している」と述べ、同グループが最近発表した、新製品と新技術の開発期間を最大30%短縮するというコミットメントを強調した。