愛された「スーパーミニ」 フォード・フィエスタ47年の歴史 1つの時代の終わり

公開 : 2023.07.22 18:05

新型フィエスタST

2013年、フィエスタのホットハッチに「ST」の名が復活した。1.6L 4気筒エコブーストエンジンを搭載し、公式には最高出力182psを発生するが、これは最も近いライバル車に20ps近い差をつけている。

そのターボチャージャー・ユニットにはオーバーブースト機能があり、フルスロットルで最初の15秒間は200psまでパワーが上昇する。これほど長くフルスロットルを使える道を見つけるのは難しいだろうから、これはどこから見ても200psのクルマである。

オーバーブースト機能を搭載したフィエスタST(Mk7)
オーバーブースト機能を搭載したフィエスタST(Mk7)

現在のフィエスタ

フィエスタは2017年に最終世代(Mk8)に移行したが、依然としてグローバルBプラットフォームをベースにしている。

スーパーミニへの関心の低さから北米市場からは撤退したが、パンデミックによる半導体不足で生産台数が大幅に抑制された2020年まで、英国市場のトップに君臨していた。

フォード・フィエスタ(Mk8)
フォード・フィエスタ(Mk8)

フィエスタ・アクティブの登場

過去にもフィエスタの派生モデルはあったが、クーリエやフュージョンなど独自の名称が与えられていた。しかし、クロスオーバーSUVとも言えるフィエスタ・アクティブの登場は、これまでの慣習を一変させた。

実際のところ、スーパーミニであることに変わりはないが、車高が18mm高くなり、ボディ保護が強化され、砂利道でもコントロールしやすいドライビングモードが搭載された。AUTOCARはこれを「中途半端なクロスオーバー」と表現し、また「中途半端なSUV」という表現も適切だと付け加えた。

フィエスタ・アクティブ
フィエスタ・アクティブ

3気筒のST

これまでのフィエスタのホットハッチがすべて4気筒エンジンを搭載してきた。かつては言うまでもないほど当たり前のことと考えられていただろう。フォードは新たに3気筒しかないエンジンを作り、性能よりも燃費が重視される状況では2気筒だけで走行できるようにした。

1.5Lエコブーストは、排気量が小さいにもかかわらず、従来のSTと同等の最高出力200psを発生する。AUTOCARはこれを「眉をひそめるような速さ」と表現し、「特に中回転域まで」は先代よりも速く感じられると書いている。

最終世代のフォード・フィエスタST
最終世代のフォード・フィエスタST

終幕

10年以上にわたって英国販売チャートのトップに君臨してきたフィエスタは、2021年、ついにヴォグゾールコルサの後塵を拝した。2022年にはフェイスリフトが行われたものの、現在ではトップ10の常連ではなく、フォードで最も人気のあるプーマの背中を追う形となった。そして2023年7月7日、最後の1台がドイツの生産ラインから搬出された。最後の2台は、それぞれ英国とドイツでフォードのヘリテージ車両として残される。

フォードから新しいエントリーモデルが登場するとすれば、それはおそらくフィエスタとはまったく異なるものになり、ほぼ間違いなく、エンジンではなく電気モーターのみを搭載し、「フィエスタ」の名を冠さないモデルになるだろう。1つの時代が終わりを迎えたことは確かだ。

フィエスタは歴史にその名を刻んだ。
フィエスタは歴史にその名を刻んだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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