ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 後編
公開 : 2023.07.23 07:06
V6ターボを搭載した俊足ピックアップのサイクロンと、SUVのタイフーン。生産数1000台に留まった2台を英編集部がご紹介します。
もくじ
ーまったくホイールスピンせずに突進
ーディーゼルターボのように頼もしいトルク
ー0-97km/h加速は5.3秒 広く豪華なレザー内装
ー熱とトルクがエンジンマウントへ与える負荷
ーGMCサイクロンとタイフーン 2台のスペック
まったくホイールスピンせずに突進
今回ご登場願ったブラックのGMCサイクロンは、英国に住むマーカス・ホーカー氏がオーナー。現在まで12年間も維持しているという。北米のフロリダ州で販売され、グレートブリテン島へやってきた。この土地には、10台しか存在しないらしい。
走行距離は約6万5000km。ターボを大径化し、ガソリン・インジェクターの容量を増やし、メタノール・インジェクターを追加し、サスペンションは社外品へ交換されている。ブッシュ類はポリウレタン製へ置換してある。だが、見た目はほぼノーマルだ。
欧州車に見慣れた筆者の感覚で表現しても、サイクロンは意外なほどコンパクト。ピックアップトラックへ馴染みが薄い人でも、プロポーションが優れていると感じるだろう。
ドアを開くと、大きな2スポークのレザー巻きステアリングホイールが迎えてくれる。着座位置はかなり高めだ。
ダッシュボードには、時速120マイル(約193km/h)まで振られたスピードメーターと、4800rpmからイエローゾーンになるタコメーターの並ぶメーターパネルが鎮座。残りの燃料のほか、油温と水温もわかる。実際の最高速度は、199km/hまで出せる。
V6ターボエンジンを目覚めさせると、V8エンジンよりドライでシャープなノイズを誇らしげに撒き散らし出す。4速ATのシフトレバーを傾けドライブを選択。ストロークの長いアクセルペダルを踏み込むと、まったくホイールスピンせずに突進を始める。
ディーゼルターボのように頼もしいトルク
テールを沈ませながら、48.3kg-mの最大トルクを無駄なく路面へ伝える。V6エンジンの咆哮を響かせつつ、変速のたびにウェイストゲート・バルブのホイッスルを奏で、ひたすらスピードを増していく。
100km/h前後までは、顔がニヤけるほど速い。アメリカの大手自動車メーカーによる量産車というより、有能なチューニングガレージが手を加えたような、粗削り感も漂う。
トルクはターボディーゼルのように頼もしい。スポーツカーとも異なる。滑らかな路面でも、ワダチのような路面の傾きの存在がステアリングホイールへ明確に伝わる。ステアリングレシオは驚くほどスロー。切り始めの反応も曖昧だ。
少なくとも、グリップ力は充分。荒れたグレートブリテン島のアスファルトでも、構わず突き進める。
シャシーはボディと別体のセパレート構造だから、動的能力は決して高くない。だが、サイクロンの怒涛の加速力は、GMCのマーケティングに大きく貢献した。ポルシェやフェラーリと伍するという事実だけで、自動車メディアの表紙を飾れた。
サイクロンが生産されたのは、1991年の1年限り。最大積載量はピックアップトラックとしては充分ではない226kgに制限され、オフロード走行には明らかに向いていなかったが、2995台という台数が売れた。
しかしGMCは、開発コストからより多くの利益を求めた。そこで1992年に2台目となるカラハリの量産仕様、タイフーンが提供される。
画像 ゼロヨンはフェラーリ348t超え サイクロンとタイフーン 同時期のC4コルベット 最新の高性能ピックアップも 全118枚