10年過ぎても圧倒的な加速力 テスラ・モデルS プレイドへ試乗 3モーターで1033ps

公開 : 2023.08.12 08:25

息を呑むような加速で我々を驚かせた、BEVのモデルS。フェイスリフトを受けた最新版を、英国編集部が評価しました。

システム総合での最高出力は1033ps

一部のバッテリーEVが叶える鋭い加速力は、既に周知の事実かもしれない。それでもテスラモデルS プレイドのアクセルペダルを踏み込むと、背中がシートへ押し付けられ、ボディは地平線の彼方へすっ飛んでいく。忘れられないイベントだといえる。

もし条件が許すなら、静止状態から250km/h超の速度域まで、ためらうことなくダッシュを続ける。その間にギアは切り替わらず、ノイズも殆ど発しない。とても不思議なのだが、ポルシェタイカンとはスピード感が異なる。

テスラ・モデルS プレイド(英国仕様)
テスラ・モデルS プレイド(英国仕様)

こんな異次元の加速が超高額なハイパーカーではなく、普段使い前提の大型サルーンで達成されていることへ、発売から10年以上が過ぎた今でも驚かずにはいられない。モデルSを指名買したいと思える、大きな理由になり得る。

現在は、右ハンドル車をテスラは提供していない。オプションを除いた英国での車両価格は、11万3480ポンド(約1986万円)から。決してお安い金額ではないが、動力性能を考えれば、お手頃だと表現しても間違いではないだろう。

モデルS プレイドには、3基の駆動用モーターが搭載されている。フロントには427psのユニットが1基、リアには420psを発揮するユニットが2基載り、システム総合での最高出力は1033psに達する。

3基のモーターが、同時に全力で働くことはない。95kWhの容量を持つ、駆動用バッテリーが提供できる電力で制限されている。

世界最高水準にある電動パワートレイン技術

テスラの電動パワートレインの技術力は、今でも世界最高レベルにある。0-100km/h加速を2.1秒(AUTOCARの計測では2.5秒)でこなし、日常的な電費は5.3km/kWhと、エネルギー効率も優秀。多くのメーカーが、まだ達成できていない水準にある。

航続距離は600km。急速充電能力にも長け、残量10%から80%まで、29分で電気を蓄えられる。ソフトウエアが必要だと判断すると、トルクベクタリング機能も働く。

テスラ・モデルS プレイド(英国仕様)
テスラ・モデルS プレイド(英国仕様)

そんなモデルSは、最近になって微妙なフェイスリフトを受けた。特にインテリアは、大幅に刷新されている。

これまでと同様に、テスラは最善を尽くすべきところと、妥協すべきところを巧みにわけている。他を圧倒する電動パワートレインと、車載機能のほぼすべてを司る17.0インチのタッチモニターが、これまでは最優先されてきた。

だがフェイスリフトによって、冷淡で淡白すぎるとも感じられたインテリアにも、改良が施されている。内装の素材が、温かみや上質さを増した。タイカンのように贅沢な雰囲気にまでは届いていないものの、居心地は良くなっている。

通常ならステアリングコラムから伸びている、ワイパーやウインカーなどのレバーが存在しないことに変わりはない。ミニマリスティックな仕上げは従来どおり。テスラにも、レバーの方がベターだと疑問を抱いている技術者はいるように思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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