日本の中古車が海外で人気上昇中のワケ 何万台もの「入念に整備されたクルマ」を輸入する英国
公開 : 2023.07.13 06:05
英国では現在、日本から輸入された中古車に対する注目度が高まっています。台数はまだこれからですが、丁寧にメンテナンスを受けた状態のいい個体が比較的安価に手に入るというのが、人気の理由の1つになっているようです。
輸入しやすく信頼性も高い日本の中古車
2000年代初頭に人気を博した、日本から輸入された右ハンドルのマツダMX-5、ユーノス・ロードスターを覚えている英国人は多いだろう。
筆者(英国人)が所有していた個体は整備履歴がなく、走行距離も不確かだったが、信頼性が高く、錆びもなかった。
現在も、英国と同じように左側通行の日本から、日産スカイラインやホンダ・シビック・タイプRといった中古車が輸入され、高性能車でありながら、整備履歴や走行距離の証拠が十分に揃ったコンディションの良い個体が手に入る。
また、日本仕様のドイツ車、スウェーデン車の中古右ハンドル車も人気が高まっている。フォルクスワーゲン・トゥーラン、ゴルフ、ポロ、BMW 1シリーズ、3シリーズ、5シリーズ(特にステーションワゴンタイプ)、メルセデス・ベンツCクラス、Eクラス(こちらも主にステーションワゴンタイプ)、アウディA4アバント、A6アバント、ボルボのステーションワゴンなどだ。
ほとんどがガソリンのAT車で、製造から10年以上経過している。この年式の日本からの輸入車は、英国の複雑な個別車両認証制度に基づく試験を受ける必要がないからだ。ただし、日本の型式認証は取得する必要がある。
今年に入ってからの3か月間で、英国は日本から約5000台の中古車を輸入した。そのうちの約30%は欧州車であり、大半はフォルクスワーゲンであったが、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、ボルボ、ミニも含まれていた。残りの70%は日本車で、ハイブリッド車、MPV(ミニバン)、SUV、そして一部の高性能車であった。
鍵を握る「車検」制度 排ガス規制も影響
こうした中古車輸入の起源は2008年にさかのぼる。日本と欧州の型式認証規制がより緊密に連携するようになり、欧州の自動車メーカーがリアフォグランプやヘッドライトウォッシャーなどの装備を搭載したクルマを日本に輸出し始めたのである。
英国にもその中古車が少しずつ入ってくるようになった。しかし、英国が都市中心部に低排出ガスゾーン(LEZ)を設けたことで、その流れは一気に加速した。これは、2014年に導入された排出ガス規制ユーロ6以下のディーゼル車と、ユーロ4(2005年)以下のガソリン車にペナルティを課すものだ。
この低排出ガスゾーンは、9000ポンド前後のファミリーカーに適用されることはなかったため、そうしたクルマの需要を呼び起こしたのである。
残念なことに、条件を満たす英国の中古車は不足しており、走行距離が多く、コンディションも怪しいことが多い。しかし、日本から輸入された中古車は違う。
フォルクスワーゲンのレポートによると、日本では「多くの顧客がクルマを非常に入念にメンテナンスし、ちょっとしたことでもディーラーのワークショップに行く」という。その理由の1つが、英国のMOT制度に相当する「車検」の存在である。
車検は新車から3年目で受け、その後は2年ごとに受ける。フォルクスワーゲンのレポートによれば、多くのオーナーは高い車検費用を支払うよりも、「スマートフォンと同じくらいの頻度」でクルマを買い換えるのだという。
日本のドライバーはその後、規制が厳しく混雑した市場で不要になったクルマを売るという、難題に直面する。その結果、毎年約120万台の中古車が日本から輸出されている。
ロシアとアラブ首長国連邦がそれぞれ20万台の輸入で大きなシェアを占めている。英国は2万台で16位である。