名機Aシリーズを初搭載 オースチンA30/A35 英国版クラシック・ガイド 理想的な小型乗用車 前編

公開 : 2023.08.05 07:05

オランダ・チューリップ・ラリーで総合優勝

小型乗用車として生まれたA30は、モータースポーツでも一定の活躍を残した。特に、1956年にオランダ(ネザーランド)で開催されたチューリップ・ラリーでは、総合優勝を掴んでいる。

英国のサーキットでは、後期型のA35をレーシングドライバーのジョン・スプリンゼル氏がドライブ。各地で勇姿を披露した。ほかにも、1957年にはフランスのサーキット、オートドロム・ドゥ・リナ・モンレリで、長距離クラスの速度記録も更新している。

オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)
オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

登場から70年以上が経過し、近年はクラシックカー・イベントを中心に再び注目が高まっている。現存する例の多くがレーシングカーとしてモディファイを受け、グッドウッド・リバイバルなどでしのぎを削り、われわれを喜ばせている。

前期のA30でも、後期のA35でも、今でも運転は楽しい。本来の能力をしっかり引き出すには、ドライバーの技術もある程度求められる。年代物のクルマだけに装備は最小限だが、乗員空間は見た目以上に広いことも魅力だろう。

オーナーの意見を聞いてみる

友人が所有するオースチンA30に憧れて、1982年にA35を購入したというキース・ベネット氏。「妻の移動手段として購入しました。オーナーズクラブのイベントへ参加すると、このA35の状態がとても良いことへ気付いたんですよ」

「4ドアのデラックス仕様で、リアクォーターに窓があり、バンパーにはクロームメッキのオーバーライダーが付いています。2オーナー車で、大切に維持されてきたようです」

オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)
オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

「わたしたちは積極的に乗っています。牽引バーを取り付けて、トレーラーを引っ張ることもありますね。ボディはサビが進行したので、2009年にレストアを頼みました。サイドシルとフロアを交換し、リアのフェンダーなどは溶接でツギハギされています」

「エンジンとトランスミッションは、自分でリビルドしました。ガレージにはスペアパーツがいっぱい取ってあります。オリジナルと異なる部分は、ステンレス製のマフラーが付いていることくらい」

「ブレーキは、力を込めて踏み続ければ制動力が高まります。運転がとても楽しいですね。ショーイベントでは、幾つかの受賞経験もあるんです」

英国で掘り出し物を発見

オースチンA35 2ドアサルーン(英国仕様)

登録:1958年式 走行:−km  価格:2万4950ポンド(約436万円)

コスト度外視で、HRDC(ヒストリック・レーシング・ドライバーズ・クラブ)アカデミーによって作られた、モータースポーツ用のA35。ダンロップ・オールスターズ・シリーズなどのヒストリックカー・レースへ、そのまま出場できる内容にある。

オースチンA35 2ドアサルーン(1958年式/英国仕様)
オースチンA35 2ドアサルーン(1958年式/英国仕様)

グッドウッドやシルバーストーンなどでのサーキット・イベントは、既に何度も経験済み。BTCCドライバーのアンドリュー・ジョーダン氏や、TVタレントのアント・アンステッド氏などが、ステアリングホイールを握ったクルマだ。

オースチンA35 4ドアサルーン(英国仕様)

登録:1957年式 走行:1499km(レストア後) 価格:2万5000ユーロ(約362万円)

1985年に英国からオランダ(ネザーランド)へ移った、948ccエンジンのA35。2003年に、熱心なオーナーによってレストアが施されている。完成後は余り乗られておらず、仕事の内容も丁寧だと思われる。

ボディは鮮やかなフロリダ・グリーン。希少なオリジナルのサンルーフが備わっている。エンジンルームはボディと同様に美しく、グリーンのレザー・インテリアも見た目は好印象。好みは、分かれるかもしれないが。

中古車購入時の注意点などは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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