名機Aシリーズを初搭載 オースチンA30/A35 英国版クラシック・ガイド 理想的な小型乗用車 後編

公開 : 2023.08.05 07:06  更新 : 2023.09.12 11:06

かつて彼の地の国民車といえた、A30「ニュー・セブン」。近年、注目度が上昇中だというクラシックを英編集部がご紹介します。

機Aシリーズ・ユニットが搭載されたA30

機として知られるAシリーズ・ユニットが始めて搭載された量産車が、小さなオースチンA30。当時としては先進的な直列4気筒エンジンだった。

初期の803cc仕様は、部品が見つかりにくくなっている。ウオーターポンプやオイルフィルターですら、入手が難しい。傑作の起原として魅力的ながら、扱いやすさでは劣る。長く楽しむなら後期のA35に積まれた、948ccユニットの方が安心かもしれない。

オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)
オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

基本的なメンテナンスさえ怠らなければ、エンジンは堅牢で不具合は少ない。チューニング次第で、大幅なパワーアップも可能だ。

ベアリングのノイズやノッキング音が聞こえるなら、リビルド時期のサイン。排気ガスへ過度に白煙が混ざる場合は、ピストンリングの摩耗が原因かも。バルブステムやシールだけの劣化、ということもある。

現在の無鉛ガソリンで3000rpm以上の回転域まで回すと、バルブシートの破損を招く。対策品への交換は必須だろう。パワーが低く感じられるなら、圧縮比を確認したい。内部摩耗が進行している可能性がある。

なかにはエンジン・スワップされた例も

A30には、レイモンド・ローウィ氏のデザイン事務所とオースチンによって、比較的頑丈なモノコック構造が与えられている。しかし当時の防錆技術は高くなく、経年劣化と相まって状態の良い個体を探すことは簡単ではない。

最近までの取引価格が低調だったことも、望ましい保管状況から遠ざける大きな理由になってきた。これから購入する場合は、可能な限りコンディションに優れる1台を選びたいところ。

オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)
オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

Aシリーズ・エンジンとトランスミッションは、過去に交換されていても不思議ではない。エンジンブロックの右上にあるリベットで固定されたプレートと、ブロック左側に鋳込まれた排気量を示す番号、950などで確かめられる。

なかには、1098ccや1275ccのエンジンへ載せ替えられた例もある。排気量が増やされているなら、トランスミッションも対応品へアップグレードする必要がある。特に、ケースが割れてしまうことが珍しくない。

パワーアップしたら、それに見合うブレーキも欲しい。フロント側は、オースチンA40用のドラムブレーキへコンバージョン可能。MGミジェット用の部品を利用し、ディスクブレーキ化するキットも英国では売られている。

ノーマルのエンジンであれば、ノーマルのブレーキでも好調なら性能は充分。調整不良やシリンダーの固着には、注意したいところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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