クラシック・フェラーリの高騰は続く 250LMが新記録で落札
公開 : 2023.07.13 17:22
58年ぶりにフェラーリがル・マンを制した興奮も覚めやらぬ7月6日、パリのアールキュリアル・オークションに出品されたフェラーリ 250LMが過去最高額で落札されました。
58年前、ル・マンで勝利したフェラーリ
フェラーリ 250LMは今年、誕生60周年を迎えた。今年のル・マン24時間レースでの499Pによるフェラーリの勝利は、実に58年ぶりのことであったが、58年前に優勝を記録した最後のフェラーリこそが250LMだったのだ。
その250LMのC/N:5901がアールキュリアル・ オークションに姿を現し、過去最高の額となる24億オーバーで落札されたのである。クラシック・フェラーリの高騰はまだまだ衰えることを知らないようだ。
フェラーリ 250LMとは
250GTOの進化型として送り出された250LMの正式名称は250GT/LMだった。この名はフェラーリが250GTOのエヴォリューション・モデルとして250LMの車両公認を国際自動車連盟(FIA)に申請したことに由来し、車名のLMとはル・マンを意味する。しかしFRだった250GTOに対し、250LMはミドシップ・レイアウトで車体の構造が全く異なることから進化型とは認められなかった。
当時GTクラスのホモロゲーション(公認)を得るためには最低50台の生産が必要だったが、フェラーリは32台を作るのが精一杯で、プロトタイプ・クラス(後年になってGTと認められるが)で闘うことになる。
当初は車名の250(1気筒あたり250cc ×12)が表すように3Lエンジンを搭載していた。最終的に3.3Lの275ユニットが積まれたが、車名は250LMのままとされた。当時フェラーリのワークスチームはプロトタイプ・クラスで総合優勝を狙う330/365P2で闘い、脇を固めるディーラーチームは旧型のマシンとGTカーでサポートしていた。プロトタイプ・クラスで闘うことになった250LMはディーラーチームとプライベーターに託され、各国のレースで数多くの勝利を獲得する。
250LMにとって晴れの舞台となったのが1965年のル・マン24時間だ。本命だったワークスチームの275P2と330P2がリタイヤし、代わってトップに立ったのがノース・アメリカン・レーシング・チーム(N.A.R.T)の250LMだった。250LMはそのまま1-2位でチェッカーフラッグを受け、フェラーリにとって6年連続、9回目の栄冠をもたらす。しかし、この優勝はつい先日までフェラーリにとって最後のル・マンでの勝利となった。
シャシーナンバー5901の250LM
250LMだけのオークションが、フランスのアールキュリアル・モーターカーズにより開かれた。同社は6月30日にルマン・クラシック・オークションを開催したばかりだが、7月6日にパリの本社で行われた。出品されたのはシャシーナンバー5901の250LMで、新車でN.A.R.T.にデリバリーされ、1966年のデイトナ24時間にスペアカーとして持ち込まれたが、レースを走ることはなかった。これが後年高いオリジナル度を保つ理由となった。
引退後はアメリカのフェラリスティの許に移り、アメリカのイベントでおなじみの存在となった。一時期はフェラガモ創設者の息子が所有していたという記録がある。
1996年にはスイスに住むホテルオーナーが入手。1998年から1999年にかけてイギリスのDKエンジニアリングで、オリジナルのボディを活かした完璧なレストアが施された。そして2002年にフランスでレーシングマシンを中心に集めるGTCコレクションを率いるジャン・ギカスの許に移り、出品まで所有していた。なおレストア後の走行は24年間で僅か2000kmだった。