今後の電動モデルにも期待大 BMW iX 長期テスト(最終) レンジに並ぶ洗練性と快適性
公開 : 2023.07.22 09:45
エンジンを売りにする上級ブランドが発売した、フラッグシップBEVのiX。英国編集部が長期テストで実力を検証します。
もくじ
ー積算1万6593km レンジローバーに匹敵する洗練性
ーiXのスイートスポットといえるxドライブ50
ー特別なクルマだと知覚させるインテリア
ーBMWの今後の電動モデルにも期待を抱かせる
ーセカンドオピニオン
ーテストデータ
積算1万6593km レンジローバーに匹敵する洗練性
これまで数か月に渡って長期テストしてきた、BMW iX。過去の記事を振り返ると、斬新なスタイリングへ当初は馴染めていなかったことを思い出した。約1万6000kmをともにしたことで、今はすっかり見慣れた存在になっている。
BMWのフラッグシップ電動SUVとして、強い拒否反応を示すほどの見た目ではないと思う。同社のXMの方が、インパクトという点では遥かに強い。それでも一般的なユーザーにとって、iXの第一印象は必ずしもポジティブなものだけとは限らないようだ。
とはいえ、非常に魅力的な電動SUVだといえる。心に刻まれるような体験を、沢山与えてくれた。
このiXは、i3に続く、BMWにとって10年ぶりとなる量産のバッテリーEV(BEV)だ。都市部での移動を前提とした小型モデルではなく、大型SUVで、アウディQ8 eトロンやメルセデス・ベンツEQE SUVなど、各社からライバル・モデルも提供されている。
iXの特徴といえるのが、内燃エンジンを搭載した既存モデルをコンバージョンしたのではなく、BEVとしてゼロから設計されたこと。電動パワートレインを積むSUVが、どれほどラグジュアリーなものになるのか、実際に体現されている。
日常的な走りの洗練性や快適性では、最新のランドローバー・レンジローバーに匹敵する。乗り心地はしなやかで、運転しやすく、挙動は常に予想しやすい。長距離を疲れ知らずで移動でき、助手席や後部座席の乗員も、心地良い時間を過ごせる。
iXのスイートスポットといえるxドライブ50
現在、英国のiXで選択できる仕様には3種類がある。71kWhの駆動用バッテリーを搭載するxドライブ40と、105kWhへ増量されるxドライブ50、最もパワフルなトップグレード、M60という構成になっている。
この中間に当たるxドライブ50は、iXのスイートスポットだといっていい。容量の大きい駆動用バッテリーを積み航続距離は長く、ツインモーターで523psという不足ない最高出力を発揮する。更に上の、M60ほどのパワーは必要ないと考えさせる。
乗り心地もベスト。M60にはスポーティなサスペンションが組まれ、長所の1つが薄れているように思う。
ここ数年はCOVID-19の流行により、クルマへ乗る機会が少なくなっていた。それでも、走行距離が1万6000kmを超えたことが、秀でた快適性や洗練性を物語っている。欧州大陸へも2度、合計3600kmほど遠征した。
動的な能力も高く評価できる。BMWの新しいラインナップとして存在感を示すだけでなく、同クラスの競合モデルと比較しても、印象的なものだった。
BEVで話題の中心になるのは、航続距離かもしれない。iXは、気温が低くなければ一度の充電で560kmほど走行可能。高速道路の速度域で欧州大陸を横断しても、350km以下に落ち込むことはなかった。特別な旅行計画は、殆ど不要といえた。
筆者の場合は自宅に充電器があり、日常的なエネルギー補充は停めている間に終えられた。iXの急速充電能力は最大195kWもあり、公共の充電器で必要以上に待たされる場面もなかった。