次代が電動SUVから始まる ロータス・エレトレ Sへ試乗 現在の理想的モデル 後編

公開 : 2023.07.16 08:26  更新 : 2023.07.17 08:57

従来のブランド・ファンへ現実を突きつける、電動SUVのエレトレ。販売数が見込める新モデルを、英国編集部が評価しました。

ドイツで開発された事実が伝わる

かくして、ロータスエレトレのステアリングホイールを握ってみると、ドイツで開発されたという事実が伝わってくる。今までのロータスとは、明らかにフィーリングが異なっている。

もっとも、驚くほどの真実ではないかもしれない。車重が2.5tを超える、電動で四輪駆動のクロスオーバーは、これまで同社に存在しなかったのだから。

ロータス・エレトレ S(欧州仕様)
ロータス・エレトレ S(欧州仕様)

従来とのつながりは、過度に期待しない方がいい。コミュニケーション力に長けたステアリングや、息を呑むような敏捷性、不思議なほど柔軟な乗り心地などは、どんなにペースを速めても体験できない。

英国の技術者も、ドイツへ赴き開発へ携わっている。だが、試乗したグレートブリテン島南東部の傷んだ路面のことは、余り意識されていないようだ。

姿勢制御は落ち着いているが、乗り心地は明確に硬め。タイヤサイズは、フロントが275/40で、リアが315/35とワイド。22インチのピレリPゼロを履く。

オプションで23インチを選択できるものの、ロータスのシャシー技術者は推奨していない。20インチへインチダウンも可能。走行時の抵抗が小さくなり、航続距離にも貢献するため、悪くない選択だろう。しかも無料だ。

走行中は、駆動用モーターのノイズはほぼ車内へ響いてこない。アクティブ・ノイズキャンセラーを機能させることで、ノイズレベルは5dBAも更に抑えられているという。

ドイツ的といえるソリッドな質感

アクセルレスポンスは、低速域で特にリニア。優しく足を傾けると、優しく走り始める。本域で加速させるには、ペダルをしっかり踏み込む必要がある。

ドライブモードは、ツアー・モードが標準。速度域が上昇すると、アスファルトの不整を巧みに均しはじめ、エレトレは落ち着きを増していく。とはいえ、英国では珍しくない隆起部分や舗装の剥がれた穴を通過すると、衝撃がしっかり伝わってくる。

ロータス・エレトレ S(欧州仕様)
ロータス・エレトレ S(欧州仕様)

スポーツ・モードではサスペンションが引き締まるものの、乗り心地は我慢を強いるほどではない。モードを問わず、ドイツ的といえるソリッドな質感が常にある。

本来、アクティブ・アンチロールバーは、コーナリングの負荷に反応してボディロールを抑える。一方でストレートでは緩め、しなやかな乗り心地を両立させるために開発された技術だ。

しかしエレトレでは、高速道路のクルージング時でも硬さが残っている印象。そのかわり、コーナリング時のボディの傾きは最小限といえる。カーブへの侵入時に僅かにロールした後は、安定した姿勢が保たれる。

前後に同じ馬力の駆動用モーターが載る四輪駆動で、アンダーステアやオーバーステアといった兆候はほぼ皆無。視界の開けたタイトコーナーで相当に勇気を奮い立たせても、シャシーの能力には余裕が残されている。新しい個性といえる。

例えば、ポルシェ718ケイマンとロータス・エミーラを比較すると、718ケイマンの方が路面をしっかり掴み続けることがわかる。だが、ポルシェ・カイエンとエレトレは、そこまで似ていないとは思えない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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