突き抜けた特長を強化 アウディRS6 アバント・パフォーマンスへ試乗 630psへ上昇

公開 : 2023.07.18 08:25

アウディの象徴的ステーションワゴン、RS6。更なるパワーとグリップ、サウンドを得たパフォーマンス仕様を、英編集部が評価しました。

全天候型のドライバーズ・ワゴンを具現化

現行型のアウディRS6 アバントの開発期間に、アウディ・スポーツ部門には小さくない変化があったのではないかと想像する。何らかの、決定的なマインドの進展が生じたのではないだろうか。

高速ステーションワゴンへ求められるものに対し、より明確に理解が進んだように思う。全天候型のドライバーズ・ワゴンとして、オシの強いスタイリングや、圧倒的な動的特性が徹底的に追求され、具現化されている。

アウディRS6 アバント・パフォーマンス・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS6 アバント・パフォーマンス・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

大きな荷室が叶える利便性や、ブランドの特徴といえる車載テクノロジーは、RS6 アバントにとって欠かせない。だが、実用的なステーションワゴンらしい雰囲気は、強くは望まれていなかった。ワイルドで突き抜けた特長が必要だった。

4代目となる、C8型のRS6 アバントが登場したのは2019年。大きく膨らんだブリスターフェンダーや低く構えたスタンス、好戦的なフロントグリル、威圧的なリアデュフューザー、大径でシャープなホイールに至るまで、そんな姿勢が表現されていた。

しかし、モデル末期が近づいている。この魅力を最後まで維持すべく、パワートレインへ更なるチューニングが施された。圧倒的に速いという強みを、一層引き上げるために。

4.0L V8ツインターボエンジンの最高出力が増強されただけではない。放たれるサウンドも、より聴き応えのあるものになった。アルミホイールは軽くなり、装備が充実され、特別感を強めている。

防音材の一部を省略 車内に響く本物のノイズ

果たして、パワーの上昇率はそこまで大きくはない。公道で明確な違いが現れるほどではないだろう。新しいターボチャージャーによって30psが追加され、最高出力は630psを得ている。

最大トルクは、86.5kg-mに達した。V8エンジンは、従来より僅かに意欲的に回転するようにもなった。とはいえ車重が2100kgもあるため、体感できる変化は限定的ではある。そもそも、RS6 アバントは桁外れに速かった。

アウディRS6 アバント・パフォーマンス・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS6 アバント・パフォーマンス・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

ただしそこには、アグレッシブなサウンドが必要だった。実際の性能には、大きな影響がないとしても。

間違いなく、RS6 アバント・パフォーマンスの音響的な違いには気付けると思う。エンジン音と排気音を調和させ、車内で鑑賞できるよう、キャビンに装備されていた防音材の一部が取り除かれている。

V8エンジンがレブリミットめがけて吹け上がろうとすれば、本物のノイズが響いてくる。従来のRS6と比較して、ボリューム自体は増えていない。しかし人工的なサウンドが抑えられ、より耳に心地良くなった。歓迎したい変化だ。

また英国では、ベースグレードのRS6 アバントが選択肢から落とされたため、サスペンションやステアリングのオプションが簡素化されている。四輪操舵システムと、トルクベクタリング・リアデフが標準装備になっている。もちろん、四輪駆動のクワトロだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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