軽量EVスポーツ「TR25」登場 1953年のトライアンフTR2をオマージュ 無名会社がデザイン

公開 : 2023.07.17 06:25

1950年代に最高速度記録を破ったトライアンフTR2へのオマージュとして、ロンドンを拠点とするデザイン会社マッキナがEVスポーツ・コンセプト「TR25」を製作しました。市販化の予定は。

現代に蘇る「TR」シリーズの名

ロンドンを拠点とするデザイン会社マッキナは、新しいEVスポーツ・コンセプト「TR25」を発表した。トライアンフの権利を所有するBMWの許可を得て、かつてのTR2へのオマージュとして製作されたものだ。

シンプルで現代的なフォルムを持つTR25は、自動車デザインを手掛けるマッキナの最新作となる。トライアンフ全盛期がそうであったように、EV時代のクルマもシンプルで楽しいものであることを表現しようとしている。

マッキナ・トライアンフTR25コンセプト
マッキナ・トライアンフTR25コンセプト    マッキナ

シャシーやバッテリー、主要な駆動系には昨年生産を終了したBMW i3のコンポーネントを使用している。スタイリングは1953年のトライアンフTR2を踏襲し、ベルギーのヤブベーケ(Jabbeke)の直線道路で当時の速度記録を樹立した車両へのオマージュとして、マッキナ独自の現代的解釈を盛り込んだ。

マッキナ(Makkina)の名前と実績は、自動車メーカーの間では知られているが、基本的に公の場に出ることがないため、一般にはほとんど知られていない。実際、マッキナの創設者であり取締役のマイケル・アニ氏によれば、TR25は同社にとって初めての一般公開だという。

TR25は、自動車メーカーとしてのトライアンフ創立100周年とTR2の誕生70周年を記念すると同時に、マッキナの創立25周年を祝うものでもある。

前述のように、TR25はトライアンフの権利を持つBMWの承認を得て製作されたものだが、今のところ市販化されるという話はない。アニ氏はトライアンフを「自動車業界において信じられないほど重要な名前」とし、今回のTR25をその「再起」と呼んでいるが、1台限りのショーカーであるとも明言している。

マンチェスター育ちのアニ氏は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでデザインを学んだ。マッキナの得意分野はブランドを前面に押し出すことだという。TR25では、「今日に関連する文脈の中で、ブランドの英国的アイデンティティにふさわしいステートメントを生み出すことが重要だった」と彼は言う。

約1トンの軽量EVスポーツ

TR25の開発プロジェクトは、アニ氏がクルマとドライバーを写した1枚のモノクロ写真にインスピレーションを得たことから始まり、完成までに約1年を要した。

「わたし達は、このクルマの記録的な性能と、それを可能にするデザインに夢中になりました」

マッキナ・トライアンフTR25コンセプト
マッキナ・トライアンフTR25コンセプト    マッキナ

コンセプトはまず紙に描かれ、次にCAS(コンピューター)に移された。デザインの検証後、高密度の発泡スチロールから実物大のモデルとして削り出された。原寸大でも、大半の市販車より小さいことは間違いない。全長はわずか4.0m程度、全高はかろうじて1.0mに届く程度で、ドナーカーのBMW i3 Sより50cmほど低い。

ドイツで製作されたTR25は、驚くほどシンプルだが、短いフロントオーバーハングや細長いテールなど、オリジナルのTR2の本質的な特徴を端的に反映している。速度記録を打ち立てた車両と同じくシングルシーター(もちろん右ハンドル)で、ドアは上方に開いて乗降できる。シートはオリジナルと同じブルーレザー。虫めがねのようなデザインを再現したヘッドライトの中には「25」の文字。ドライバーの頭の後ろには横転防止用のバットレスがあり、控えめなバックカメラも装備されている。1950年代のトライアンフバッジも現代風にアレンジされた。

インテリアには、1950年代のトライアンフのスポークを彷彿とさせるモダンなステアリングホイールが装備されている。中央のシンプルなビナクルには、速度、充電残量、航続距離を示す3つのダイヤルがある。

TR25は、推定車両重量1095kg、0-100km/h加速5.2秒、最高速度185km/hとされる。1回の充電での航続距離は推定305km。

オリジナルのトライアンフTR2は、ライバルのサンビーム・アルパインがマークした時速120マイル(193km/h)の速度記録を、1953年に時速124.889マイル(201km/h)という僅差で上回った。2020年、英国の国家遺産記念基金の助成金を受けて国のために購入され、現在はゲイドンの英国自動車博物館に保管されている。

記録挑戦車は、標準的なTR2をベースに、アンダーシールドやホイールスパッツなどの空力的な追加装備を「オプション」で装着したが、実際には1953年のアールズコート・ショーで発表されたプレプロダクションモデルだった。トライアンフ愛好家によれば、この速度記録とそれに伴う宣伝効果によって、不振のTR1で不安定なスタートを切ったトライアンフのマーケティングが強化され、米国での英国製スポーツカーの販売でトライアンフがシェアを獲得するのに貢献したという。

今回のTR25が市販化される可能性は非常に低いが、マッキナにとっては知名度を高めるチャンスとなるだろう。

記事に関わった人々

  • スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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