BMW M2 詳細データテスト 文句なしの速さ 落ち着きの増したハンドリング 快適さも大きく進歩
公開 : 2023.07.22 20:25 更新 : 2023.08.11 20:55
走り ★★★★★★★★★☆
3.0L直6のやや回転数が高く、シームレスでスムースなアイドリングは、まさにMモデルらしいものだ。ターボチャージャーの吸気音は大きすぎず、きしるようなメタリックのヴェルヴェットを思わせる内燃エンジンの音質は、紛うことなくBMWのそれだ。
ギアを入れてみると、シフトレバーの動きはやや重く、弦を弾くようなフィールが感じられ、なかなかソソるところもある。もしもメーカーが望めば、より軽くなめらかに仕上げることもできたはずだ。しかしこのクルマでは、タイミングとやや強引な操作、手荒い扱いに堪えることが必要で、そうしたキャラクターや役割にこのギアボックスはマッチしている。
予想どおり、MTのM2に電子制御のローンチコントロールは装備されず、DSCこと一般的なスタビリティコントロールをオフにすると10段階調整にアクセスできるトラクションコントロールも完全にその代役を務めることはできない。
思い切り効きを弱くすると、ワイドなリアタイヤと太いトルクは、エンジン回転が落ちるかホイールスピンするかの絶妙な境界線を保ってくれる。しかし、逆に効きを強くすると、推進力をちょっと余計に奪ってしまう。1速だけでなく、2速へ放り込んだ後もパワーを抑えてしまうのだ。
あれこれ試した結果、マークした0-97km/h加速タイムは4.5秒。これは、公称タイムである0-100km/h加速4.3秒にかなり近い。猛烈というほどではないが、3年前に計測した4.0Lエンジンのポルシェ718スパイダーと勝負できる速さだ。なお、0−161km/hは互角で、ゼロヨンでは僅差ながら勝っている。
極論を言えば、このクルマのスピードに劣っているところはまったく感じられない。直6ユニットは操作の幅がすばらしく広く、パワーデリバリーはM3やM4と同じくみごとなまでにリニアだ。高いギアを早めに選んでしまい、3000rpmに全然届かないところからエンジンを回した場合でもなければ、ターボのレスポンス遅れを感じることは一切ない。上は7000rpmを超えても、息切れ感を感じさせない。
それを試せるのは、トランスミッションのギア比がかなりロングだからだ。エンジンが思い切り回る音を楽しもうと思えば、2速で113km/h、3速で161km/hを超えるので、高速道路を別にすれば、普通に走っている限り4速以上を使う必要はめったにない。
ファイナル比をショートにすれば、もっとクイックに走れるだろう。しかし、ポルシェのGTモデルがそれでアドバンテージを得ているように、高めの中間ギアで高回転まで回すと、真に偉大な高性能エンジンの輝きがますます引き立つ。もっとも低出力な仕様であっても、S58型6気筒はかなり抗い難い魅力を味わえる。