BMW M2 詳細データテスト 文句なしの速さ 落ち着きの増したハンドリング 快適さも大きく進歩

公開 : 2023.07.22 20:25  更新 : 2023.08.11 20:55

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

F87世代のM2とF82世代のM4クーペをどちらも所有したことがあるようなBMW Mの常連が、どちらのモデルを先に思い浮かべるかは定かではない。

新型M2は走りの万能さやドライバーによる設定のわかりやすさ、角の取れた感じはM4寄り。となると同時に、先代以上の大きさや重さを感じるのは避けられない。

先代にあった敏捷性は失われたが、より熟成度と安定感の増したパフォーマンスカーに仕上がっている。グリップとスタビリティも向上している。
先代にあった敏捷性は失われたが、より熟成度と安定感の増したパフォーマンスカーに仕上がっている。グリップとスタビリティも向上している。    JOHN BRADSHAW

典型的な英国のB級道路で先代M2のように走っても、挙動が荒れたり跳ねたりすることはない。しかし、歯切れのいいターンや、パワーオンで嬉々として回るような動きも失われている。

ラウンドアバウトやタイトターンで走行ラインを取るのは先代より一瞬遅れるが、その後は新型のほうがラインにきっちり張り付く。グリップも走り方も、より本気のパフォーマンスカーらしい。

複雑な路面を飛ばしたときの安定感も、新型のほうがはるかに上だ。ツーリングでの快適性は、大きく向上している。

そう言うと、個性が薄らいだり、より大きいMモデルとの差が明確でなくなったりしていると思われるのではないだろうか。そういう面も多少はあるかもしれないが、MTがもたらす一体感によって、このクルマならではのポジションはしっかり確保されている。たしかにこれは正真正銘のMモデルで、非常に楽しいクルマだ。多面的な楽しみも、しっかり持ち合わせている。

80km/hで駆け抜けるようなコーナーではガッチリ路面に食いつき、曲がり方は手に負えないようなものではなく、バランスの取れた安心感がある。3速に入れて、電子制御系を起動したままにすると、スタビリティも精密さもかなりのもので、動じることのない落ち着きを見せ、脱出では強力なトラクションを発揮する。

同じコーナーを、2速でDSCを弱めて走ってみるのもおもしろい。駆動輪は高回転しながらエンジンブレーキがかかりつつコーナーへ入り、活発さを増したシャシーはニュートラルな姿勢でアペックスに食いつき、脱出に向けてパワーオンすると昔ながらのMモデルらしいオーバーステアを楽しめる。

このM2は疑いなく、新たなパフォーマンスレベルを扱うために、ダイナミクスを進歩させる必要があった。しかし、その下には正真正銘の愛すべきMモデルらしいわんぱくさが隠されている。増大した重量とグリップレベル、そしてトルクにより、暴れ出したときには先代よりやや持て余すが、落ち着いていて融通が効くという点も先代より明確に見て取れる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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