サーキットがホーム ロータス・コルティナ 高性能フォード:欧州での60年(1)
公開 : 2023.07.29 07:05
ロータスと手を組んだ、コルティナの誕生は1963年。以来、運転好きを惹き付けてきた高性能な欧州フォードの60年を、英編集部が振り返ります。
もくじ
ー起源はロータスとの協働プロジェクト
ー興奮に欠けていた当初のフォード・コルティナ
ーツインカムエンジンにアルミ製ボディ
ー前輪を浮かせて疾走したジム・クラーク
ーサーキットがホームグラウンド
ーロータス・コルティナ(1963〜1966年/英国仕様)のスペック
起源はロータスとの協働プロジェクト
1960年代を迎える前から、欧州フォードは自動車の民主化を他メーカーに先駆けて実践してきた。そしてその頃から、追加予算での興奮も提供するようになった。1963年のロータス・コルティナは、ベーシックなモデルから誕生した高性能モデルだった。
以来、同社の姿勢は変わらない。多くのメーカーも、比較的手頃なファミリーカーをベースにした高性能仕様や、市民にも手が届くスポーツカーを販売してきた。それでも、フォードほど連綿と作り続けてきた量産車メーカーは、他にないだろう。
その実現に向けて、これまでには多様なアプローチが取られてきた。速いフォードと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、現在ではRSやSTといった2文字かもしれない。
しかし、起源をさかのぼればロータスとの協働プロジェクトへ辿り着く。また、1980年代から1990年代にかけては、コスワースとのコラボレーションも積極的に展開された。スポーティな派生グレードとしては、比較的手頃なXRから始まった。
フォードは、2023年7月にフィエスタの生産終了を決めたが、コルティナから始まった、60年間に及ぶ欧州での歴史は揺るがない。今回は、各世代から順に5台のモデルを振り返り、高性能フォードの魅力を再確認してみたいと思う。
協力:ライハウス・カート・レースウェイ
興奮に欠けていた当初のフォード・コルティナ
欧州フォードにとって、革命的な変化となったのがロータス・コルティナだろう。白黒テレビからカラーテレビへ切り替わったように、1960年代の量産車ブランドへ鮮やかな輝きをもたらした。
フォードとモータースポーツという、重要な結びつきを欧州で構築することにも繋がった。このきっかけを生んだのは、デザイナーやエンジニアではなく、販売部門に所属していたウォルター・ヘイズ氏だった。
彼は1962年にフォードへ入社するまで、英国のタブロイド紙、デイリー・メールの副編集長を務めていた。その頃、フォードはコルティナの開発へ着手した段階にあった。
ヘイズは、タブロイド紙のコラム枠のため、ロータスを創業したコーリン・チャップマン氏へ記事の執筆を依頼した過去があった。以来、親交を深めていったという。
その原稿料は、だいぶ高額だったらしい。「ジャーナリストとしてかなりの金額を彼(チャップマン)に支払っています。わたしがロータスを創業したんじゃないかと思うほど」。と後に言葉を残している。
完成へ近づいた新しいコルティナは、優れたクルマではあった。しかし、興奮には欠けるとヘイズは考えた。
そんな時、AUTOCARで技術関連の編集者も務めていたハリー・マンディ氏が、ダブルオーバーヘッドカム(DOHC)のヘッドを、フォードの1498ccユニット用に開発したという情報を入手。新たな可能性を見出した。