独自ボディに2段リアウイング シエラ XR4i 高性能フォード:欧州での60年(3)

公開 : 2023.07.29 07:07

挑発でテールが流れるエキサイティングさ

一般道を走らせると、コンパクト・ハッチバックのXR2やXR3がヤンチャなホットハッチだったのに対し、XR4iは遥かに洗練されていた。性格付けが大きく違っていた。

サスペンション・スプリングは柔らかく、乗り心地は快適。通常のシエラよりアンチロールバーは強化されていたものの、カーブではボディロールが小さくなかった。

フォード・シエラ XR4i (1983~1985年/英国仕様)
フォード・シエラ XR4i (1983~1985年/英国仕様)

当時は、ソフトなサスペンションが影響し、秀でた操縦性を得ていたXR2やXR3には並べないと評価する人もいた。それでも40年が経過した今では、この5台で最も親しみやすく運転が楽しく感じられる。

2.8L V6ケルン・ユニットは間違いなくスポーティ。低回転域からトルクが太く、より現代的なエスコート RSコスワースから直接乗り換えても、充分に速い。

エンジンは勇ましいサウンドを放ち、欧州製マッスルカーと表現したくなるほど活発。シャシーバランスは素晴らしく、シフトフィールには充足感が伴う。右足で挑発するとテールが流れ、エキサイティングな個性を垣間見せる。

荒れた路面での快適性を備えつつ、フィエスタのようにコーナーでは機敏。ワインディングへ飛び込むことも、高速クルージングで延々と遠くを目指すことも、問題なく受け入れてくれる。大人な高性能フォードだ。

大々的に売りたいというフォードの熱意

今回ご登場願ったレッドのシエラ XR4iは、1984年式。オーナーはアレン・パッチ氏で、5年ほど前にレストアを終え、路上への復活を果たしたという。

XR4iにはふんだんに追加装備が与えられており、シエラを大々的に売りたいという、当時のフォードの熱意を感じる。15インチの7スポーク・アルミホイールは、カプリ 280が履くものとデザインは同じだが、登場はこちらの方が先。インセットも異なる。

フォード・シエラ XR4i (1983~1985年/英国仕様)
フォード・シエラ XR4i (1983~1985年/英国仕様)

ダッシュボードには、赤いピンストライプで縁取られたメーターパネルが据えられる。グリーンに光る、デジタルディスプレイが時代を物語る。手頃な価格でありながら、しっかり細部まで気が配られていることがうれしい。

ホワイトのピンストライプも、XR4i専用のオプション。Injectionの書体が、統一感のあるスタイリングで浮いている。

発売当時はまだカプリ 2.8iが現役で、価格も安く、英国ファンの支持を集め続けていた。シエラ XR4iが、当初は狙い通りの販売数を稼げなかったことが、今では残念に思えてならない。

フォード・シエラ XR4i (1983~1985年/英国仕様)のスペック

英国価格:9170ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約450万円)以下(現在)
販売台数:2万5662台
全長:4531mm
全幅:1727mm
全高:1367mm
最高速度:210km/h
0-97km/h加速:8.4秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1175kg
パワートレイン:V型6気筒2792cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/5700rpm
最大トルク:21.9g-m/3800rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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