コッシー伝説の始まり エスコート RSコスワース 高性能フォード:欧州での60年(4)

公開 : 2023.07.30 07:05

ロータスと手を組んだ、コルティナの誕生は1963年。以来、運転好きを惹き付けてきた高性能な欧州フォードの60年を、英編集部が振り返ります。

英国人が「コッシー」と呼ぶコスワース伝説

レース用エンジンを手掛けるコスワースとフォードとの関係は、1970年代から始まっていた。1980年代に入ると、RSを冠するモデルの多くには、専用チューニングが施されたユニットが搭載されるようになった。

両社の信頼関係を示すように、「コスワース」という名を始めて追加する時、フォードは最も有能なモデルを選んだ。小さなボンネット内には、最大限まで能力が高められたYBユニットと呼ばれる、2.0L 4気筒エンジンが収まった。

フォード・エスコート RSコスワース(1992~1996年/英国仕様)
フォード・エスコート RSコスワース(1992~1996年/英国仕様)

この皮切りとなったのが、1985年の2ドアクーペ、シエラ RSコスワース。英国人が「コッシー」と呼ぶ、伝説が生まれた。

鋳鉄製のピント・ユニットをベースに、コスワースはツインカム仕様となるYAAユニットを開発。さらにターボチャージャーを追加し、RSコスワースの定番エンジンとなる、YBユニットが完成した。

フォードはシエラの魅力を広く知ってもらう手段として、モータースポーツへ着目。YBユニットはレーシングカー用の理想的なエンジンだと判断され、最終的に1万5000基という大量生産の契約が結ばれた。

シエラが参戦を目指したレースの規定では、5000台が市販されていれば充分だった。しかしパートナーシップの関係性を深めるべく、遥かに数の多いRSコスワースが生産されたのだ。実際、ツーリングカー・レースでは圧倒的な性能を発揮した。

シエラのドライブトレインを短縮し搭載

その次に提供されたのが、シエラ・サファイア RSコスワース。4ドアサルーンのボディに、シエラ RSコスワースと同じドライブトレインを搭載し、コスワース仕様のなかで最多の販売数を稼ぎ出した。

サファイア RSコスワースはサーキット・イベントだけでなく、世界ラリー選手権(WRC)にも参戦した。ただし、オフロードに備えて四輪駆動化されたものの車重が重く、ランチア・デルタトヨタ・セリカを相手に苦戦を強いられた。

フォード・エスコート RSコスワース(1992~1996年/英国仕様)
フォード・エスコート RSコスワース(1992~1996年/英国仕様)

シエラがモデル末期を迎えるなか、フォードのラリーチームはコンパクトでライトウエイトなマシンを強く求めた。5代目エスコートにRSコスワースが登場する、お膳立てが揃ったといえた。

既にエスコートはコンパクト・ハッチバックとして充分な人気を得ており、シエラのようにモータースポーツでイメージを向上させる必要性は高くなかった。とはいえ、ラリーマシンのベースとしては好適だった。

そこで、高性能モデルの開発を担うフォード・スペシャル・ビークル・エンジニアリング(SVE)は、サファイア RSコスワースのドライブトレインとプラットフォームを短縮。エスコートの3ドア・ボディシェルと融合させた。

ボディパネルは、ドイツ・カルマン社に製造を依頼。エスコートのシルエットは保たれつつ、要所要所が拡大され、ボディキットが追加され、鋭敏な走りに備えた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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