FFからRRへ一転 ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーターへ試乗 航続距離653km

公開 : 2023.08.22 08:25

現実的には約430km 洗練された大人なEV

まず航続距離だが、そもそもカタログ値へ一致する距離を現実的に走れるバッテリーEVは、今のところ存在しないといっていい。2の場合、穏やかな気象条件で高速道路と郊外の一般道を複合的に走らせた結果、電費は平均で5.4km/kWhが示されていた。

現行のBEVとして、驚かされるようなエネルギー効率ではないだろう。それでも充分に優秀な部類ではあり、普段使いで430km前後は走れる計算になる。アイオニック6と同等といえる。

ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーター(英国仕様)
ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーター(英国仕様)

後輪駆動になったことでの走りの変化は、僅かに感じられる。だが、前輪駆動だった2 シングルモーターと同様に、運転が楽しいというより、心地よく運転できるといった表現に留まることに変わりはない。

タイヤのグリップやトラクションには、まったく不足ない。姿勢制御は適度に引き締まり、ステアリングは性格に反応する。後輪駆動でも、これらの特徴はそのままだ。

カーブへ積極的に突っ込んでみると、リアタイヤがボディを押し出すことを匂わせるバランスは感じられるものの、穏やかに走る方が適している。洗練された大人なバッテリーEV、という印象が強い。

改善できる乗り心地 意味のあるアップデート

乗り心地は、もう少し改善する余地があるだろう。硬めなことは問題ないものの、落ち着きを感じさせるような減衰力特性を得られていない。舗装の剥がれた穴を通過した時や、路面変化で生じるノイズも、しっかり車内へ伝わってくる。

全体の印象を大きく濁すほどではない。とはいえ、サスペンションには更に磨きをかけられると思う。

ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーター(英国仕様)
ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーター(英国仕様)

インテリアは、基本的に従来どおり。ポールスター独自の特徴的な素材が用いられているが、ボルボと似た雰囲気も受け継いでいる。ドライビングポジションは自然で、高く評価したい部分の1つだ。

リアシート側の空間は、大人でも長時間過ごせる余裕がある。荷室容量は特に大きいわけではないが、ハッチバックが大きく開くため、荷物を積みやすく実用性は高そうだ。

グーグルと共同開発されたインフォテインメント・システムは、発表直後は操作性がいまひとつだったものの、最新バージョンでは大幅に改善。扱いやすいシステムだと思う。

2 ロングレンジ・シングルモーターの英国価格は、4万8950ポンド(約856万円)から。アイオニック6とモデル3 ロングレンジとの間に収まる。

見た目は殆ど変わらないが、改良でしっかり実力を高めてきたポールスター。このような意味のあるアップデートは、大歓迎したい。

ポールスター2 ロングレンジ・シングルモーター(英国仕様)のスペック

英国価格:4万8950ポンド(約856万円)/5万9850ポンド(約1047万円/試乗車)
全長:4606mm
全幅:1859mm
全高:1479mm
最高速度:204km/h
0-100km/h加速:6.2秒
航続距離:653km
電費:6.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2009kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:79kWh
急速充電能力:205kW(DC)
最高出力:299ps
最大トルク:49.8kg-m
ギアボックス:シングルスピード(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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