オフローダーの進化に感動 ランドローバー・レンジローバー ネカフ・ジープ 質実か贅沢か 前編
公開 : 2023.07.29 09:45
オフローダーの元祖、ウイリスMBから80年以上。最新技術満載のレンジローバーはどれほどの進化を遂げたのか。悪路での比較で確かめました。
険しい場所を陸上で目指すための手段
人類は道具を手にする前から、自らの場所を求めて移動を続けてきた。最初は、自らの手や足が頼りだった。馬や牛を頼った時代が長く続き、産業革命を経て、自転車やバイク、自動車、電車、飛行機など、より有能な移動手段を獲得していった。
しかし整備された道のない、険しい場所を陸上で目指せる手段の基本は、ここ1世紀以上変わっていない。丸く成形された4本の金属を、4本のゴムで包んだ車輪が、人間の足の代わりになってきた。
現実的な達成プロセスは、大きく進化している。ずっと安楽で快適に、困難な目的地まで辿り着けるようになっている。そこで、新旧2台のオフローダーを用意してみた。
早速、新しいモデルからご紹介しよう。ランドローバー・レンジローバーのプラグインハイブリッド、P440eで、最先端のオフロード技術が満載されている。とはいえ高級車でもあり、本当の意味で悪路に最適なモデルとまではいえないかもしれない。
ランドローバー・ディフェンダーの方が好適だ、と指摘する読者もいらっしゃるだろう。悪路の走破性を追求した、象徴的な完成形の1つであることは間違いない。
それでも、高度な技術と贅沢な車内に、容赦ない不整地、という組み合わせへ筆者は強く惹かれる。かなり気を使いそうではあるが。
オフローダーの起源へ非常に近いM38A1
もう1台は、元祖といえる大先輩。ウイリスMBの改良版に当たるM38A1型、いわゆるジープだ。ただし、この車両はネザーランド(オランダ)のネカフ社によって、1955年にライセンス生産されたものだけれど。
さかのぼれば、ネザーランドのスパイカーが世界初の四輪駆動車を開発したのは1900年代初頭。その後、第二次大戦時にアメリカのウイリス社が生産した1941年のMBが、現在のオフローダーの原型になったという認識は、一般的なものだといえる。
戦後の生産だとしても、M38A1型ジープはオフローダーの起源へ限りなく近い。実際に目の当たりにすると、極端に感じられるほど質実で質素。余計な飾りは一切ない。
サスペンションは前後ともリーフスプリング。フロアから非常に長いレバーが伸びていて、四輪駆動か後輪駆動、ハイかローを選べるトランスファーが備わる。トランスミッションは3速のマニュアルが載る。
エンジンは水冷式の2.2L直列4気筒、ハリケーン・ユニット。ボディにドアはなく、ヒーターもない。絶壁のダッシュボードに数枚のメーターが並ぶが、車載技術と呼べるものはその程度。惜しくも、一部のメーターは機能していない。
M38A1型の設計目的は、場所を選ばず走ること。その達成に必要なもの以外、装備されていない。しかも、ラインオフしてから68年が経っている。