オフローダーの進化に感動 ランドローバー・レンジローバー ネカフ・ジープ 質実か贅沢か 後編

公開 : 2023.07.29 09:46

オフローダーの元祖、ウイリスMBから80年以上。最新技術満載のレンジローバーはどれほどの進化を遂げたのか。悪路での比較で確かめました。

走破性では劣らないM38A1型ジープ

ランドローバーレンジローバーで、オフロード・モードを選択。エアサスペンションが車高を持ち上げ、クリアサイト・グランドビューと呼ばれる機能が有効になる。

ボンネット直下の地面をカメラが映し出し、車内のモニターで確認できる。どこを走っているのか、手に取るようにわかる。

ダークブルーのランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィーと、ダークグリーンのネカフ・ジープ M38A1
ダークブルーのランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィーと、ダークグリーンのネカフ・ジープ M38A1

ヒルディセント・コントロールを有効にし、ローレンジを選ぶ。レンジローバーは、ほぼ自動的に急斜面をゆっくり降りていく。この機能自体は特に新しいものではないが、毎回体験するたびに、その容易さには驚いてしまう。

途中で路面状況が大きく変化しても、動じる気配はない。平然と下りきった。

M38A1型のネカフ・ジープは走破性では劣らないものの、同様にリラックスしていられるわけではない。ローレンジを選び、下り始める。尖った岩を乗り越えると、跳ねるようにボディが揺さぶられる。

英国価格13万4865ポンド(約2427万円)もするレンジローバーのように、ホイールやボディの擦り傷は心配しなくていい。しかし、タイヤやブレーキ、クラッチが、必要な時に求めた能力を確実に発揮する保証はない。

ボディの幅は1.6mもないものの、坂の頂上などでは安定感が高い。車重が軽いため、勾配でタイヤが滑りそうになる場面も少ない。

快適という言葉からかけ離れている

幸運にも、今回は地面が乾燥していた。レンジローバーが履いていた20インチのミシュラン・オールシーズン・タイヤは、2695kgの車重を問題なく受け止めていた。酷く濡れていたら、状況は違っていただろう。

レンジローバーの全長は1.5m近くジープより長いものの、後輪操舵システムが機能し、入り組んだ森の中でも同等に身をこなす。横方向の斜面などではタイヤの向きを変えることで、接地面積を増やしトラクションを確保。安定性にも貢献している。

ダークブルーのランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィーと、ダークグリーンのネカフ・ジープ M38A1
ダークブルーのランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィーと、ダークグリーンのネカフ・ジープ M38A1

ただし、各制御ユニットとセンサーが複雑に連携するがゆえに、稀にシステムの判断に遅れや迷いが生じる。停止状態から後退で斜面を登る場面では、スロットル調整が難しく感じられた。それでも、2回目以降は学習するのか、スムーズさを増すのがスゴイ。

ランダムに露出している大きな石が、トラクション・コントロールに影響を与えることも。車内へ感知できる衝撃が届いていた。

とはいえ、こんな振る舞いへ気付けるのは、基本的には流暢に悪路をこなしている証拠でもある。走りを味わえてしまう。

ジープは、快適という言葉からかけ離れているため、細かなことへ気が回らない。筆者は過去に様々なクラシックカーを運転してきたが、初代のシリーズ1 ランドローバーが快適だと思えた、初めてのクルマになった。

M38A1の原型となるウイリスMBは、兵士を必要な場所へ問答無用に連れて行くという、唯一の目的のために開発されている。それは、しっかり果たされている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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